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野生蚊からウイルス感染の痕跡を検出する新手法を確立:医療技術ニュース
東京慈恵会医科大学は、蚊のウイルス感染の痕跡を検出する「vDNA-LAMP法」を確立した。得られた蚊の検体データからvDNA陽性地点を地図上に表示することで、感染リスク分布を可視化できる。
東京慈恵会医科大学は2025年9月16日、蚊のウイルス感染の痕跡を検出する「vDNA-LAMP法」を確立したと発表した。デング熱の流行地で、野生蚊からデングウイルス感染の痕跡を確認することに成功した。國家衛生研究院、ジョゼフ・キ=ゼルボ大学との共同研究による成果だ。
蚊は、デング熱やジカ熱、日本脳炎などの病原ウイルスを媒介する。今回の研究では、デングウイルス2型(DENV-2)に感染した細胞と人工感染蚊を用いて、ウイルス由来DNA(vDNA)を検出するvDNA-LAMP法を確立した。
西アフリカのブルキナファソでデング熱が流行した際、約1000世帯の家屋内外で採取した蚊を検査したところ、一部の検体からDENV-2由来のvDNAが検出された。また、得られた蚊の検体データからvDNA陽性地点を地図上に表示することで、感染リスクを可視化できた。
同手法は、これまで広く用いられてきた遺伝子検査法(qPCR法)の同等またはそれ以上の感度を示した。特に、ウイルス量が少ない検体で有用だと明らかとなった。vDNAを対象とすることから、蚊が死滅や乾燥した状態でも簡便かつ高感度な検出ができ、現地調査での実用性向上が期待される。また、一定温度で反応が進むため、高価な装置は必要ない。
今後はデング熱以外のウイルスにも対象を拡大し、複数の感染症を同時に把握する監視システムの構築を目指す。
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