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蚊の唾液がウイルス感染を後押し、TLR2が鍵に:医療技術ニュース
順天堂大学は、蚊の唾液に含まれるTLR2リガンドが、デングウイルスや日本脳炎ウイルスなどの蚊媒介性フラビウイルスの感染を増強することを明らかにした。感染部位にTLR2阻害剤を投与することで、フラビウイルスの病原性が著しく低下する。
順天堂大学は9月2日、蚊の唾液に含まれるトール様受容体2(TLR2)リガンドが、デングウイルスや日本脳炎ウイルスなどの蚊媒介性フラビウイルスの感染を増強することを明らかにしたと発表した。大阪大学、北海道大学、国立健康危機管理研究機構、マヒドン大学との共同研究による成果だ。
フラビウイルスは、感染した蚊が人を刺すときに、唾液とともに皮膚に注入される。蚊の唾液は、蚊がうまく血を吸うためだけでなく、ウイルスの感染を手助けする可能性が指摘されている。
実験では、蚊の唾液またはTLR2リガンドを刺激する人工物質Pam3CSK4をウイルスと同時に投与した。その結果、感染の進行が早まり、全身への拡散と重症化が促進されることを確認した。具体的には、唾液中のTLR2リガンドが免疫細胞の好中球を活性化して液性因子を放出し、単球やマクロファージを呼び込み、ウイルスが増えやすい環境を作る仕組みを明らかにした。
一方で、感染部位にTLR2阻害剤を投与することで、フラビウイルスの病原性が著しく低下することも分かった。今回の成果は、特効薬が乏しいフラビウイルス群に共通して作用する、TLR2を標的とした新たな治療法開発や予防戦略につながる可能性がある。気候変動や人流拡大でリスクが高まる、蚊媒介感染症対策への応用が期待される。
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