なぜ京セラはAGVを展開するのか 複合機のセンサーを応用した技術力:国際物流総合展2025
京セラドキュメントソリューションズは「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」において、現場の声をカタチにする「京セラ製 AGV(無人搬送車)」を披露した。
京セラドキュメントソリューションズは「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」(2025年9月10〜12日、東京ビッグサイト)において、現場の声をカタチにする「京セラ製 AGV(無人搬送車)」を披露した。幅800×長さ1030×高さ245mmの「VT01-A020(Wide モデル)」と、幅50×奥行き1230×高さ245mmの「VT02-B020(Slim モデル)」の2つのモデルの展開を予定しており、両モデル共に積載200kg/けん引500kgまで対応可能である。顧客からの意見を取り入れながら改善を進めていき、2026年度に販売開始を予定している。
今回披露した京セラ製 AGVは、中小製造業を主なターゲットに捉えて、一般的な工場や倉庫での使用を想定している。2種類のモデルを用意する理由について、「折り畳みコンテナを1個乗せるタイプなのか2個乗せるタイプなのかを選択できるようにして、一般的な用途に対応するため」(京セラドキュメントソリューションズの担当者)と述べる。
複合機で使用しているスキャナー技術を採用した、製造現場向けのAGV
京セラ製 AGVは複合機で使用している「CCD(Charge Coupled Device)センサー」を採用しているため、高価な磁気テープを使用せずに、安価な市販テープで軌道を作ってその上を走行できる。これにより、レイアウト変更時のテープの貼り換え作業が簡単になり、運用コストも大幅に削減できる。また、高解像度(600dpi)のフルカラー画像で読み取ることができるので、導入場所に合った最適なテープの色を選択して、レイアウトを考えることができる。
京セラ製 AGVには、180度読み取り可能なレーザー式の障害物検知センサーを搭載している。2mの範囲内に障害物が入るとAGVは減速し、50cmまで障害物と近づくと緊急停止して衝突を回避する。この設定は顧客の用途に合わせた変更が可能である。加えて、感圧式の安全バンパーも備えているため現場で急な飛び出しがあった際も確実に停止ができる仕組みになっている。
動力源としては、リチウムイオン電池を採用することで、連続8時間の動作が可能だ。バッテリー残量をリアルタイムで検知し、適切な充電時期を通知する機能を搭載しているため、電池の長寿命化とメンテナンスコストの削減に貢献する。加えて、搬送ラインに沿って自動充電システムを設置することで、タスクの合間に細かく充電ができ、実質24時間稼働も可能である。
また、京セラ AGVは機能拡張計画として、リモート監視による「予兆保全機能」を搭載し、走行データや各種センサー情報を解析してトラブルを未然に防止することで、生産ラインの安全な稼働と運用コストの削減を目指している。
社内で内製していたAGVを商用化 10年以上の現場経験から生まれたAGV
「今回出展した京セラ製 AGVは、もともと社内で使用していたものを商品化したものだ」(京セラドキュメントソリューションズの担当者)と語る。京セラドキュメントソリューションズの生産現場では、30年程前から他社製のAGVを導入して使用していたが、“痒い所に手が届かない”と感じることが多く、他社製品だと値段が少し高くついてしまう部分があった。これらの背景から10年程前からAGVの内製化に取り組み、社内で使用してきた。同社内である程度のノウハウがたまってきたタイミングで、社外事業化を検討してきた。
社内で使用しているAGVを商用化することについて「安全性を確保するために、安全バンパーや衝突検知機能を取り付けたが、 結果的に当初予定していたコストを大幅に上回ってしまった。また、全く知識のない業界なので、何が求められていて何が正しいのかがまだ分かっていない。今後は、商品を展開しながらフィードバックをもらう形になる」(京セラドキュメントソリューションズの担当者)と思いを述べた。
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