ロボットとAGVで年2000時間削減、サントリー大阪工場の自動化:スマート工場最前線(1/3 ページ)
サントリーは大阪工場において、原料ハンドリング工程の自動化を本格導入した。ロボットとAGV、AIも活用して、多様な形態の原料を効率的に搬送/開封/計量/検査できる体制を構築した。その内容を紹介する。
サントリーは2025年8月26日、大阪工場におけるモノづくりに関する説明会をオンラインで開催し、原料取り扱いの自動化に関する取り組みを紹介した。
サントリー最古かつ唯一原料酒製造を担う大阪工場
サントリーの大阪工場は、1919年に前身に当たる築港工場が建設されており、サントリーの中で現存する最も古い工場になっている。
現在は、大麦やトウモロコシなどを原料とする蒸留酒(スピリッツ)のジンの他、スピリッツに香味成分などを加えたリキュール、缶チューハイなどふたを開けてすぐ飲めるRTD(READY TO DRINK)製品の原料酒、梅酒などを製造している。特に大阪工場建設のきっかけとなった「赤玉ポートワイン(現在は赤玉スイートワイン)」は、今も大阪工場で生産されている。
大阪工場はサントリーの中でも唯一、原料酒を作る工場になっており、生産された原料酒は日本中に運ばれている。生産品目数は約170SKU(Stock Keeping Unit、最小管理在庫)に上り、2024年は約500万ケースを生産した。
近年、さまざまなボタニカル(草根木皮)による多彩な味わいやクラフトジンブームなどを背景に、ジンの市場規模は世界的に拡大しており、サントリーの推計では2024年の国内の市場規模は、2019年比で3.5倍となる約250億円だったという。サントリーでは2030年には、国内ジン市場を2020年比で6倍以上、2023年の2倍以上となる450億円規模に拡大させる目標を掲げている。
増強する生産能力を支える原料ハンドリング自動化
その中で、サントリーはジンをはじめとしたスピリッツ/リキュールの生産能力および品質向上を目的とし、2024年から2025年にかけて大阪工場で55億円の設備投資を実施。原料製造を担う「スピリッツ・リキュール工房」を建て替えるとともに、5基の浸漬タンクを新設し、4基の蒸留釜を更新する他、開発生産設備を新設することで生産能力を2.6倍に増強する方針だ。
新たなスピリッツ・リキュール工房において取り組んだのが、原料ハンドリング工程の自動化だ。サントリーでは2023年から、サントリー九州熊本工場内に構築した原料ハンドリング自動化検証設備を用いて、安川電機とともにAI(人工知能)なども活用した自動化技術の開発に取り組んできた。
サントリーホールディングス グローバル技術戦略推進部 部長の澤崎純一氏は「これまで原料のハンドリングにおいて、保管から輸送、計量、乾燥、開封、投入とほぼ全工程を人手によって実施してきた。われわれは非常に多様な原料を用いており、その多様な原料がさまざまな梱包形態になっている。そういった幅広い梱包形態に対応してロボットでハンドリングすることは技術的に非常に難しく、自動化の壁になっていた。また、既存工場での自動化はスペースの制約も大きな問題になっていた。ただこれからは、全ての工程をロボットや自動搬送機などの活用によって自動化を目指している」と語る。
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