廃棄物を「炭化」して素材に、Gabの循環ソリューションが示すごみゼロ社会への道:リサイクルニュース
焼却処分や海外輸出で環境負荷をかけていた有機系廃棄物が、炭化物として資源に生まれ変わる。Gabは、炭化技術で廃棄物を炭化し、人工皮革などの素材として再利用する循環ソリューション「.Garbon」を構築した。
ごみ問題の打開策を展開するスタートアップのGabは2025年9月9日、東京都内で記者会見を開き、有機系廃棄物を独自のプロセスで炭化し、この炭化物を材料に人工皮革をはじめとする素材を作製する循環ソリューション「.Garbon」を始動したと発表した。
料金プランは「炭化PoCプラン」と「資源循環プラン」の2種類
国内では持続可能な社会の実現に向け、廃棄物とCO2排出量の削減が求められている。一方、毎年多くの焼却灰が埋め立て処分されている他、多量の使用済みプラスチックが海外へ輸出され、現地における環境汚染の要因となっている。
プラスチック循環利用協会の調査結果によれば、2023年度における国内の使用済みプラスチックのうち、マテリアルリサイクルされたものは22%で、ケミカルリサイクルされたものは3%、サーマルリサイクルされたものは64%だ。このように合計で89%の使用済みプラスチックが再資源化されているが、国内では使用済みプラスチックのリサイクル率をさらに高めるために実効性のある施策が必要とされている。
こういった状況を踏まえて、Gabは.Garbonを構築した。.Garbonでは、企業や自治体などから低コストで購入した有機系廃棄物(使用済みプラスチックや衣服、食糧残渣など)を無酸素で加熱し、熱分解して炭化する。
Gab 代表取締役 CEOの山内萌斗氏は「この炭化技術は燃焼(焼却)のように酸素を大量に使用しない。そのため、廃棄物の種類にもよるが、燃焼と比べてCO2排出量を30〜50%に抑えつつ炭化物を生成できる。PETの場合、全体の80%は熱エネルギーに、残り20%は炭化物として固定資源化できることが分かっている」と語った。
.Garbonで利用している炭化技術は、衣類やプラスチックを炭化可能な独自特許技術を有する大木工藝の協力によって実現している。Gabは、.Garbonの展開に向けて、大木工藝と炭化技術の独占ライセンス契約を締結し、炭化処理がスムーズに行える体制を構築した。山内氏は「大木工藝の本社(滋賀県大津市)の敷地内に当社の炭化炉を1台設置しており、炭化処理を円滑に行えるようにしている」と話す。
.Garbonの料金プランは「炭化PoCプラン」と「資源循環プラン」の2種類だ。初回10社限定で募集している炭化PoCプランは、対象の企業や自治体の有機系廃棄物の中で、最も炭化効率が高い廃棄物と条件を検証し、レポートを作成し提供する。併せて、有機系廃棄物の炭化の実装に向けた最適なオペレーション構築までを一貫して行う。最大5種類までの有機系廃棄物に対応し、レポート作成のために1種類につき約100gの試料をGabに送る必要がある。料金は36万円(税別)だ。
山内氏は「炭化PoCプランの営業を2025年4月に開始した。30社に提案し、そのうちトヨタ自動車をはじめとする6社で採用が決まっている。トヨタ自動車ではカーボンニュートラル推進活動の1つである『TOYOTA UPCYCLE』の一環で当社とともに.Garbonの実証実験を実施している。この実証実験では、自動車製造工程で生じる廃棄物や使用済み素材を対象としている」と述べた。
資源循環プランは、対象の企業や自治体の有機系廃棄物を低コストで購入し、炭化技術で炭化物とした後、ニーズに合わせてその炭化物をさまざまな材料と組み合わせて高付加素材へ加工してその企業に販売する。料金はアウトプット内容に応じて見積もりとしている。なお、炭化費(加工費)は料金に含まれている。
また、同社では既に、有機系廃棄物の炭化物をベースとした素材として人工皮革「.Garbon Synthetic Leather」を開発している。.Garbon Synthetic Leatherは、有機系廃棄物由来の炭化物と樹脂を配合することで、消臭/抗菌などの機能を高めた素材だ。用途としては、レザージャケットやシューズ、バッグ、名刺入れ、インテリア、内装建材の素材を想定している。
「.Garbon Synthetic Leatherは、国内の人工皮革メーカーと当社が共同開発したもので、10年耐久や摩耗、引っかき、剥離強度のテストなどをクリアしている。使用後に再度炭化することで、再資源化も可能だ」(山内氏)。.Garbonの素材製造では、人工皮革の製造で高い技術力を有する企業との連携体制を構築しており、デザイン性や機能性などを備えた人工皮革の開発を可能としている。
今後Gabは、さまざまな業界に向けて.Garbonの展開を予定している。山内氏は「廃棄物の種類や発生状況は業界や企業ごとに異なるため、今回の取り組みだけでは対応できない。そこで当社では、炭素技術以外の再生利用技術で循環型社会の実現に挑む他の企業との横断的なパートナーシップを通じ、さまざまな企業や自治体の“廃棄ゼロ”に必要な解決策を提供する『ゼロウェイストコンソーシアム』の構築を構想している」とコメントした。
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