「JOINT3」の全貌、パネルレベル有機インターポーザー実現を加速する仕組みとは?:材料技術(3/3 ページ)
レゾナックが国内外の27社と連携し、新たな共創プラットフォーム「JOINT3」を設立した。このプラットフォームは、パネルレベル有機インターポーザーという次世代技術の開発を加速させ、半導体産業の未来をどのように変えるのか。
国内外の27社が参加するグローバルなコンソーシアム
JOINT3は、パネルレベル(515×510mm)の試作ラインを使い、有機インターポーザー向け材料/装置を開発する。ガラスインターポーザーやガラスコア基板を対象としていない理由について、阿部氏は、「ガラスインターポーザーやガラスコア基板は最終製品にもガラスが残る。パネルレベル有機インターポーザーのプロセスでは、ガラスはあくまで製造過程で『キャリア』として使用され、最終的なプロセスが完了した後に取り外される。そのため、最終製品には割れやすく重さの要因となるガラスが残らない利点がある」と触れた。
加えて、材料、装置、設計ツールのメーカーが、共通の試作品(テストビークル)を作製し、共創により開発を進める。材料、装置、設計ツールのメーカーがJOINT3を「練習場」とし、パネルレベル有機インターポーザーに関する技術を磨く。
JOINT3の活動拠点は、レゾナックの下館事業所(茨城県結城市)内に新設した研究開発拠点「Advanced Panel Level Interposer Center(APLIC)」と、チップ実装、解析、信頼性評価を行う先端半導体パッケージングR&D「パッケージングソリューションセンター」(神奈川県川崎市)だ。
APLICは、レゾナック エレクトロニクス事業部で使用していた建物に設置された研究開発拠点で、8〜12レチクルのインターポーザーを510×515mmのパネルラインで作製する。開発目標としては、配線幅/間隔が1/1μm以下で、配線層数が5層以下のRDLインターポーザーや、配線幅/間隔が2/2μm以下のチップ埋込インターポーザーを挙げている。
「APLIC内に8〜12レチクルのインターポーザーを510×515mmのパネルラインを構築し、2026年に稼働を開始する予定だ。実構造に近い検証結果を得ることで、参画企業の開発を加速する」(阿部氏)。
パッケージングソリューションセンターでは、APLICで作製したインターポーザーを使い、2.xDパッケージの組み立て評価やマザーボード実装までを実施する。
レゾナックが2021年に設立した次世代半導体パッケージ技術開発のコンソーシアム「JOINT2」とJOINT3の違いについて、阿部氏は、「日本企業14社で構成されたJOINT2は、2.5D/3Dパッケージの要素技術開発が中心だった。具体的には、インターポーザーの製造を対象としていたが、パネルサイズは320×320mmだった。さらに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として助成金を受け、研究開発プロジェクトとして、事前に設定された目標達成に向けて活動した。JOINT3は、民間企業のみで行う事業で、助成金は使用しない。国内外の27社が参加するグローバルなコンソーシアムとなっており、市場動向に合わせて柔軟に研究開発の方向性を変更できる点が強みだ」と語った。
なお、JOINT3の参画企業は、AGC、キヤノン、在原製作所、古河電気工業、日立ハイテク、JX金属、花王、リンテック、メック、ミツトヨ、ナミックス、ニッコー・マテリアルズ、奥野製薬工業、レゾナック、東京エレクトロン、東京応化工業、TOWA、アルバック、ウシオ電機、図研、米国のApplied Materials、Brewer Science、Synopsys(日本窓口:アンシス・ジャパン)、3M、シンガポールのASMPT Singapole、ドイツのComet Yxlon、オーストリアのLam Research Salzburgとなる。
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