レゾナックがAIで線幅と配線間隔が1.5μmの銅回路を形成できる感光性フィルムを開発:マテリアルズインフォマティクス(1/3 ページ)
レゾナックは、AIを活用して、有機インターポーザー上で線幅と配線間隔が1.5μmと微細な銅回路を形成できる感光性フィルムを開発した。
レゾナックは2024年12月2日、東京都内で「AI(人工知能)活用によるAI半導体向け材料の開発」説明会を開き、AIを用いて高解像度の感光性フィルムを開発したと発表した。感光性フィルムとは、絶縁層やコア層など各層の銅配線を形成するために使われるプロセス材だ。
2027年の実用化を目指して開発を推進
これまでさまざまな半導体メーカーが、回路構造を微細化してより多くの機能を1チップ上に集積させることで、半導体の高性能化や高機能化、消費電力の低減などを実現してきた。微細化の限界を迎えつつある近年は、1チップに機能を集積するのではなく、インターポーザーと呼ばれる中継部材上で複数のチップを相互接続させるチップレット技術をはじめ、多様なパッケージ技術の活用によって半導体の高性能化や高機能化に取り組む事例が増えている。
現在、インターポーザーはシリコンウエハーを用いて製造されているが、チップの数が増えるとインターポーザーの面積を大きくする必要があるため、歩留まりなどで課題がある。そこで、インターポーザーを有機材料と銅めっきにより、1辺が約500〜600mmのパネルで製造する、有機インターポーザーが注目されている。
同社 エレクトロニクス事業本部 開発センター 感光性材料開発部 Protecグループ PKG用新製品開発チームの吉原謙介氏は、「現在、直径300mmのシリコンウエハーからは4枚のシリコンインターポーザーを取り出せる。その加工には感光性材料として液状レジストを利用する。一方、有機インターポーザーの515×510mmのパネルからは16枚のインターポーザーを回収でき、感光性材料として感光性フィルムを使える」と話す。
今回レゾナックが新たに開発した感光性フィルムは、有機インターポーザーを加工するための感光性材料として使用することで、線幅と配線間隔が1.5μmという微細な銅回路を形成できる。製品形態はパネルでの製造プロセスに適したフィルムタイプとしている。「今回の感光性フィルムは2027年の実用化を目指して開発を進めている」(吉原氏)。
同フィルムの開発に当たっては、線幅と配線間隔が1.5μmという微細な銅回路の形成に対応するポリマー樹脂を開発した。このポリマー樹脂の開発では同社の計算情報科学研究センターがAI技術を活用して最適な樹脂設計を行い、高分子研究所が実際の樹脂開発を担当。この樹脂を使用して感光性材料開発部が感光システムの設計や配合、薄膜塗工、フィルム化を実施した。次に、最先端の後工程装置を備えたオープンイノベーション/研究開発の拠点であるパッケージングソリューションセンターがこのフィルムを用いて有機インターポーザーのパネル上に銅配線を試作/評価し、最適なプロセスの検証まで行った。
吉原氏は、「当社は昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の事業を統合した機能性化学メーカーだが、統合以前は樹脂開発は外注していた。自社の高分子研究所で樹脂開発が行えるようになったことで、新素材の開発スピードが以前より早くなっている」とコメントした。
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