高機能フィルム市場は「回復」フェーズが終了、今後は緩やかに成長:製造マネジメントニュース
矢野経済研究所は、国内外の高機能フィルム市場に関する調査結果を発表した。同市場について、回復フェーズを終えたところであり、今後数年は年に1桁ペースで緩やかに成長すると予測する。
矢野経済研究所は2025年8月25日、同年4〜7月にかけて、日本や韓国、台湾のフィルムメーカーやコンバーターを対象に、高機能フィルム市場に関する動向を調査し、その結果をまとめたレポートを発表した。ディスプレイおよび光学、電気、電子、一般産業向けのベースフィルムや加工フィルムなどの高機能フィルムをターゲットに、日本と韓国、台湾の同市場について分析、予測をした。
2024〜2025年の同市場は、コロナ禍でのICT関連製品向け特需からの反動で低減したが、その後の回復フェーズを経て、実際の需要に即した動きをするようになった。2024年のメーカー出荷数量をベースとした主な高機能フィルムの成長率は、光学用PETフィルムが105.2%、一般産業用PETフィルムが114.6%、MLCCリリースフィルムが121.1%、PIフィルムは115.5%だった。同社は同市場の今後の成長率について、いずれのフィルムも2025年は前年比103〜108%ほどとなり、2026年から2027年も年に1桁ペースで緩やかに成長すると予測する。
高機能フィルム市場の注目ポイントとしては、中国のフィルムメーカーの伸長が挙げられる。
光学用PETフィルム市場では、テレビ向けのLCDバックライト部材は中国ローカルフィルムメーカーが、AMOLEDやQLEDなど高精細なハイエンドのディスプレイ部材は日本や韓国、台湾のフィルムメーカーが主に供給している。光学用PETフィルム市場において中国のシェアは、2014年はごく一部にとどまっていたが、2019年には約55%、2024年には約64%に成長したと推計される。
PIフィルム市場では、ミドルエンド以上の市場における中国ローカルフィルムメーカーの参入は一部に限定されており、2019年は全体の約4%にとどまっていた。同社によると、2024年には約11%まで拡大したとみられる。
MLCCリリースフィルムは、2024年以降、スマートフォンのローエンド機種向け用途で、中国ローカルフィルムメーカーのシェアが急激に増えた。工程材であるMLCCリリースフィルムの使用量が増え、これまで輸入していた同フィルムを国内で調達するようになった結果、2022年には1%以下だった販売量シェアが2024年には約4%まで拡大したと推計される。
同社は次の成長領域として、ビヨンド5G/6G、自動運転(レベル3以上)、空飛ぶクルマ、航空宇宙、ソフトロボットなどを挙げている。これらの新領域では、耐熱性や電磁特性など、従来のフィルムでは対応が困難な性能が求められる。現状では、次世代の市場はまだ規模が小さく、新開発のフィルムがボリュームゾーンを担うまでには時間を要する。同社は、次世代製品の開発は日本のメーカーが得意とするところであり、各メーカーは次世代フィルムに求められる性能のレベルを見極めつつ、先行研究を進めることが必要と分析している。
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