紙からデジタルへ Tebikiが変える製造現場の働き方:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
Tebikiは、現場帳票の管理ツール「tebiki現場分析」のユーザー向けイベントを開催し、DXによる現場改善の価値を訴えた。
共栄工業のtebikiを活用したDX事例
イベントでは実際にtebikiを活用して現場改善を進めた共栄工業の事例が紹介された。共栄工業は1948年に創業し、スチール製家具の生産/販売を主力とするメーカーである。システム収納やデスクサイドワゴン、納骨壇などの製品を展開し、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001や環境マネジメントシステムの国際規格であるISO 14001を取得している。
共栄工業では過去に自社システムで現場工程の見える化に取り組んだが、Wi-Fi環境が工場全域で整っておらず、構築に多大な費用と工数が掛かることから挫折していた。その後Tebikiから提案を受けて、費用と工数を最小限に抑えながら工程の見える化を実現できそうだと考え、tebiki現場分析を導入した。
共栄工業の加工課ではtebiki現場分析を導入することにより、月380枚ほど使用していた紙帳票が0枚になり、記録の無駄を一掃して効率化することに成功した。紙の記録は情報共有や進捗管理をするために記録のある場所に行かなければならず、その後のデータ転記に多くの時間を要していた。紙の帳票をデジタルにすることでコストを削減しつつ、QRコードを活用することで、製品情報や開始時間を自動で記録される状態を作り、作業者の負担を大幅に軽減した。
塗装工程の前処理における温度管理では、ダッシュボードで温度変動をリアルタイムで確認できるようにし、燃料消費量を抑えて管理コストを削減することに成功した。また、データに基づいた、最適な機械運用条件を見つけられるようになったという。
データが記録され共有されることで、作業者には「見られている」という適度な緊張感と、「見てもらっている」という安心感を与えることができ、記録の重要性を再認識してもらえるようになったという。これらがきっかけとなり、作業者自らがダッシュボードを見て改善点を話し合うような積極的な行動につながるようになった。また、帳票に記録をするという業務が改善の起点になり、結果として故障やトラブルを未然に防ぐことにも貢献している。
品質保証部では納品後の製品故障対応において、tebiki現場分析を導入することで、現場で写真を撮影して責任者のサインをその場で得られるようにし、報告業務を効率化した。サービス担当者が出先でもスマートフォンから報告書を作成できるようになり、対応も迅速化して顧客とのやりとりでも報告漏れや確認ミスが減少した。
tebikiを活用した共栄工業の今後の展望
共栄工業 京都工場 品質保証部 部長の竹村由嗣氏は「tebikiはISOにおける『文書』と『記録』の管理への親和性が高い。マネジメントマニュアルについてはtebiki現場教育で作成し、記録についてはtebiki現場分析で管理する」と語る。
同社はTebikiが提供するツールを活用することで、ISOに準拠した作業改善の実現を目標に掲げている。具体的には、tebiki現場教育を活用することで、作業標準書を動画で整備して、誰でも同じ作業ができる仕組みを構築し、ISOで必要な文書を管理する。tebiki現場分析を活用することで、作業記録/異常記録をデジタル化して、記録の真正性/追跡性を確保し、ISOで必要な記録の管理も行う。
最終的には、工場内のあらゆるデータをリアルタイムで可視化することで、数字や時間の変化から未来を予測して、管理者や役員が現場に行かなくても状況を判断できる状態にし、誰もが状況を把握して改善を回すことができる現場を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「製造現場にちょうどいいデジタルを」、山善が10のサービスで複合型SaaS展開
山善は2024年2月21日にモノづくり企業向け複合型SaaSプラットフォーム「ゲンバト」のサービスを開始した。製造業DXで日本が欧州から学ぶべき点、学ばなくてもよい点は何か
製造業のDXは広がりを見せているが、日本企業の取り組みは部分的で、ビジネスモデル変革など企業全体の価値につながっていないと指摘されている。製造業のDXに幅広く携わり、2023年12月に著書「製造業DX EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略」を出版した東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト/アルファコンパス 代表の福本勲氏に話を聞いた。三菱電機、AI支援型PLMシステムを開発するスタートアップ企業に出資
三菱電機は、AI支援型PLMシステム「PRISM」を開発したThingsに出資した。製造、制御に関連する三菱電機のノウハウとThingsの生成AI技術を融合させ、製造業DXソリューションの提供に向けて実証を進める。CTCとウイングアーク、DXで構想からシステム実装までを一貫支援するサービス開始
伊藤忠テクノソリューションズは、ウイングアーク1stと協業し、製造業のDXを支援するサービスの提供を開始した。製造業DXの課題を整理し、システムの提案から実装までを一貫してサポートする。中小製造業のDXの現実――「使いこなし」にこだわったエースが成功した理由
本連載では、筆者が参加したIoTを活用した大田区の中小製造業支援プロジェクトの成果を基に、小規模な製造業が今後取り組むべきデジタル化の方向性や事例を解説していきます。第3〜5回は実際の中小製造業におけるデジタル化の取り組み事例を紹介していますが、第5回では高度な金属加工を手掛けるエースのデジタル化事例を紹介します。「成長する企業」と「現状維持の企業」 今すぐにでも変えられるそのポイントとは
本連載では、筆者が参加したIoTを活用した大田区の中小製造業支援プロジェクトの成果を基に、小規模な製造業が今後取り組むべきデジタル化の方向性や事例を解説していきます。第2回は「成功する企業」と「現状維持の企業」の差について言及しつつ、デジタル化の前提となる「意識改革」の必要性について説明します。