お〜いお茶の「茶殻」がバイオ炭に生まれ変わる、伊藤園の循環モデル:リサイクルニュース
伊藤園は「お〜いお茶」の生産時に排出される茶殻を「バイオ炭」としてよみがえらせる取り組みをスタートした。捨てていたはずの茶殻が、豊かな土壌を作り出し、おいしいお茶を育てる仕組みとは。
伊藤園は2025年8月28日、燦有機研究所や秋田製茶、ホテイフーズコーポレーションと共同で、静岡県において茶殻とコーヒーかすを原料とした「バイオ炭」を製造して同県の契約茶園で散布する「バイオ炭循環モデル」を構築し、同年7月に始動したと発表した。
バイオ炭は、木や竹など生物由来の資源(バイオマス)を加熱して炭化したものだ。バイオマス資源が吸収したCO2を炭の中に閉じ込めるため、大気中への排出を抑えられる。また、多孔質構造であるため、堆肥などと一緒に土壌に混ぜ合わせると、農作物の根の生育促進や肥料成分の吸収量の増加などが期待でき、土壌改良に役立つ。
水分量が高い飲料残渣を基にバイオ炭の安定生産を実現
伊藤園では以前から、限りある資源の有効活用と環境負荷の低減を目指し、事業活動を通じた脱炭素化や資源循環といった環境課題の解決に取り組んでいる。この一環で、茶殻をはじめとする飲料残渣を炭素資源(バイオ炭)化する研究に注力し、検討を重ねてきた。
しかし、水分量が高い飲料残渣を基に、環境に配慮したバイオ炭の安定生産は困難だった。燦有機研究所との共同研究により、茶殻とコーヒーかすを混ぜ合わせることでこの課題を克服し、良質なバイオ炭の生成を実現した。
今回のバイオ炭循環モデルでは、伊藤園の飲料製品「お〜いお茶」などの生産時に排出される茶殻とコーヒーかすを混ぜ合わせてバイオ炭を生成。このバイオ炭を、同社契約茶園で散布して茶を育成し、栽培した茶を飲料用の原料とする。
各社の役割に関して、伊藤園が契約茶園で栽培/一次加工した荒茶を調達し、火入れ加工などにより飲料用の原料とする。ホテイフーズコーポレーションが、お〜いお茶などの茶系飲料を生産し、排出する副産物である茶殻を販売。燦有機研究所が、茶殻とコーヒーかすを混ぜ合わせてバイオ炭を製造する。秋田製茶が、バイオ炭を契約茶園に散布して茶を栽培する。
農地でのバイオ炭活用は、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」において地球温暖化対策の手法として技術の開発が推進されている。
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