腹膜転移型胃がんに有効なmRNAワクチンを開発、転移予防と治療で有効性を確認:医療技術ニュース
近畿大学は、腹膜転移型胃がんに対して強い治療効果を示す、mRNAワクチンを開発した。免疫チェックポイント阻害剤と併用してマウスに投与すると腫瘍が消失し、転移の予防と治療の両面で有効性を確認した。
近畿大学は2025年8月1日、腹膜転移型胃がんに対して強い治療効果を示す、mRNAワクチンを開発したと発表した。免疫チェックポイント阻害剤と併用してマウスに投与すると腫瘍が消失し、転移の予防と治療の両面で有効性を確認した。東京大学 先端科学技術研究センターらとの共同研究による成果だ。
腹膜転移型胃がんは、予後が悪く、従来の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)では効果が乏しい。研究グループは、胃がん細胞から同定したネオアンチゲンを標的にしたmRNAワクチンを開発し、脂質ナノ粒子(LNP)という小さなカプセルに封入してマウスに投与した。その結果、がんを攻撃するCD8+T細胞が活性化され、腫瘍抗原を認識して腫瘍細胞を破壊した。
また、抗PD-1抗体との併用により、長期的な抗腫瘍免疫を維持する前駆疲弊T(Texprog)細胞と、抗体が結合した標的細胞を除去する抗腫瘍エフェクター機能を発揮した中間疲弊T(Texint)細胞の分化が促進され、腫瘍の完全排除と再発抑制が可能になった。
なお、Texprog細胞が存在しない場合、がんと戦う過程でTexint細胞は末期疲弊状態となり、消滅する。これにより腫瘍を効果的に抑制できなくなるため、Texprog細胞の維持は、持続的な腫瘍免疫に重要だと分かった。
同成果は、腹膜転移型胃がんに対する強力な治療効果となり、mRNA技術による個別化がんワクチンの開発が期待される。今後、臨床応用が進むことで、胃がん以外の難治性がんに対する免疫療法確立に応用できる可能性がある。
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