Auのナノ構造形成技術を活用し、宇宙空間でのタンパク質結晶化実験に成功:医療技術ニュース
田中貴金属グループのTANAKA未来研究所は、独自の「Auのナノ構造形成技術を応用した宇宙空間分子結晶化実験ユニット」を開発し、国際宇宙ステーションでタンパク質結晶化実験に成功した。
田中貴金属は2025年8月4日、同社グループのTANAKA未来研究所が、独自の「Auのナノ構造形成技術を応用した宇宙空間分子結晶化実験ユニット」を開発したと発表した。国際宇宙ステーション(ISS)で、タンパク質結晶化実験に成功した。
Auナノ粒子は、表面にタンパク質分子が吸着しやすい。また、粒子間では可視光域の波長でプラズモン共鳴を起こすため、タンパク質の結晶核の発生が促進される。この効果と重力の影響を受けない微小重力環境を組み合わせることで、地上より質の高い結晶や大型結晶の生成が期待できる。
TANAKA未来研究所では、タンパク質を結晶化させるカウンターディフュージョン法で使用する、結晶発生能力の高いキャピラリーを開発。内径0.5mm、長さ5cmで、内壁には平均表面間距離40nmに整列した直径20nmのAuナノ粒子が配されている。
このキャピラリーにタンパク質溶液を充填して封入した上で、恒温槽(Kirara装置)に格納した。同ユニットを、同年4月にSpaceXの無人補給機「CRS-32」に搭載して打ち上げた。
同ユニットは、ISSのコロンバス実験棟に約1カ月間設置。キャピラリー内のタンパク質溶液と外部の結晶化溶液を双方向に拡散させて結晶化させるカウンターディフュージョン法により、無重力環境下で結晶化を観察して地上に帰還した。実験の結果、Au(金)ナノ構造を形成したキャピラリー内では、Auナノ構造を形成していない場合に比べて結晶の発生数が多く、結晶化効率の向上が確認できた。
結晶発生確率の向上とコストパフォーマンスの高い宇宙実験が可能になることで、生物機能の解明や創薬研究に貢献するとしている。
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