吉利汽車が「2025世界人工知能大会」に共同出展、車載AIが進化:自動運転技術
吉利汽車は、StepFunと共同で、進化した車載AIを備えた新型車両や「全領域AI」技術を「2025世界人工知能大会(WAIC 2025)」に出展した。
吉利汽車は2025年7月30日、StepFunと共同で、「2025世界人工知能大会(WAIC 2025)」に出展したと発表した。展示内容には、進化した車載AIを搭載する新型車両「ジーカー(Zeekr)9X」「LYNK & CO 10 EM-P」などに加え、「千里豪悍(Qianli Haohan)」「Geely Future Mobility Constellation」などのAI技術が含まれる。
特に注目を浴びたのは、業界初の「人間らしさ」を備えた車載AIエージェントを内蔵したAIテック・グランド6人乗りフラグシップSUVの「Geely Galaxy M9」。このAIエージェントには、StepFunの開発による「エンドツーエンドAI音声大規模モデル」が使われており、従来とは違った高度で自然な感情音声インタラクションを可能とした。人間の感情を模した「エモーショナル・コンピューティング」によって、より自然な会話表現や文節処理ができるようになった。会話時における感情表現や話し方も多様で、ユーザーの感情状態や意図をくみ取り、声のトーンや話し方を調整する。加えて、ユーザーのことを考えたケアや支援的な機能も持つ。
StepFunは最新の基盤型大規模モデル「Step 3」を公表した。加えて、千里科技及び吉利汽車と共同で、次世代スマートコックピット「Agent OS(プレビュー版)」も発表した。同システムは、StepFunによるマルチモーダル大規模モデルおよびエンドツーエンド音声大規模モデルをベースとして、非常に自然なインタラクションを実現するという。主な機能には、マルチモーダル融合、クラウドとエッジの記憶統合、統合マップによる人機協調運転、「第3の生活空間」などがある。これにより、より自然で人間らしく、感情的なやりとりによる車内インタラクション体験を可能とする。
アルゴリズムにおいては、吉利汽車の「星睿AI大規模モデル体系」が、StepFunのようなマルチモーダル大規模モデルと深く融合している。データ面では、10兆トークン超のデータポイントと400億件もの自動車分野に絞られた垂直データを蓄積しており、大規模モデルの学習に必須な「燃料」となっている。その結果、AIの「認知能力」における上限が飛躍的に引き上げられた。
AIの三大中核エンジン(コンピューティングパワー、アルゴリズム、データ)から得られる大きなパワーを元に、吉利汽車は、エンドツーエンド学習、VLA(Vehicle Learning Architecture)、ワールドモデル(World Models)などのAI技術を駆使し、インテリジェント運転支援システム「千里豪悍(Qianli Haohan)」を開発、展開している。同システムは、さまざまなシナリオにおいて高い安全性を備えている。
自動車業界における競争の方向性が「単一技術でのブレークスルー」から「エコシステム全体の連携と効率性」へと移っており、吉利汽車は、StepFunや千里科技を始めとするテクノロジーエコシステムパートナーと共同で「AI×自動車」における技術提携のベンチマークづくりを進めていく。
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