T2が自動運転トラックの商用運行を開始、運行本数は実証の4倍以上に:自動運転技術
T2が国内初となる自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行を関東−関西間で開始する。同社が所有する5台の自動運転トラックを用いて運輸会社5社の輸送を受託しており、レベル2の自動運転で幹線輸送を行う。
T2は2025年7月1日、東京都内で会見を開き、同日から国内初となる自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行を関東−関西間で開始すると発表した。同社が所有する5台の自動運転トラックを用いて、佐川急便、西濃運輸、日本郵便、福山通運、三井倉庫ロジスティクスの運輸会社5社の輸送を受託する形で、ドライバーが乗車するものの高速道路ではハンドルから手を離すレベル2の自動運転で幹線輸送を行う。同年6月までの実証と比べて運行本数は4倍以上に増強されるとともに、実証でのエンジニアが同乗していた運行からドライバーによるワンマン運行に切り替わる。
T2 事業開発本部 本部長の國年賢氏は「2022年8月の創業時は5〜6人だった従業員数は現在173人まで増加している。当社は今日から自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行を開始するが、これを事業として進めていく役割を担う事業開発本部には約50人が所属している」と語る。
初回の運行ルートは、東名高速道路や名神高速道路を通って運輸会社5社の関東と関西の拠点間を走行する予定である。T2の自動運転トラックは5社が設定する要件をクリアしており、各社の既存運行と同等の輸送品質や安全性を担保できることを確認した上で輸送を委託する契約を結んでいる。
運航本数は実証を行っていた2025年1月の時点で月間8便だったが、商用運行を開始する同年7月は34便を予定しており4倍以上の増強となる。運行頻度も、週1階から週5回程度まで高める計画である。運行体制は、技術開発本部による実証ではT2のエンジニアとドライバーが同乗していたが、事業開発本部が担う商用運行ではドライバーによるワンマン運行となり、T2の運航管理拠点のみでオペレーションを完結させられるようになる。8月以降は月間の運行本数を増やしていく方針だ。
T2はこれまでに、高速道路におけるレベル2自動運転の実証を重ねてきており、2025年6月には国内最長距離となる東名高速道路の綾瀬スマートIC(神奈川県綾瀬市)から阪神高速道路の魚崎出入口(神戸市東灘区)の約500kmの走破を達成している。「この約500kmの自動運転走行では、車線変更9カ所、ジャンクション(JCT)通過4カ所に加えて、2km以上の長距離トンネル17カ所など自動運転における幾つもの高い難易度の関門があったが全てクリアできた。特に長距離トンネルは、GPSによる自己位置推定ができないため、カメラ、レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を融合したセンサーフュージョンで自己位置の精度を高める必要があった」(國年氏)という。
今後の運行区間としては、東名高速道路の横浜青葉IC(横浜市青葉区)から阪神高速道路の魚崎出入口を設定しており、同区間内における運輸会社の拠点を結んだ幹線輸送を行う。2028年以降には、中四国、九州への延伸を図る。
会見には、運輸会社5社を代表して、西濃運輸 運行部 運行課 参事の渡辺俊幸氏が登壇した。渡辺氏は「今回の商用運行では、当社の相模原支店から大阪西支店の運行をT2に任せることになる。自動運転トラックの実証の当初は厚木−沼津間と短い距離から始まったが、その後は回を重ねるごとに走行距離を延伸し、ついには神戸まで行けるようになった。一般貨物自動車運送事業の免許を取得するなど物流事業への本気度も高い。今後は自動運転レベル4の技術を確立することで、新しい運び方を実現してもらいたい。われわれもさまざまな協力や支援を行っていく」と述べている。
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