スバルがHEV用トランスアクスルの生産能力を増強、2027年に30万台:電動化
SUBARUは環境規制の変化やHEVの需要拡大を踏まえて、北本工場でHEV用トランスアクスルの生産能力を増強する。
SUBARU(スバル)は2025年8月7日、環境規制の変化やHEV(ハイブリッド車)の需要拡大を踏まえて、北本工場(埼玉県北本市)でHEV用トランスアクスルの生産能力を増強すると発表した。足元の年間18万台の生産能力を2027年に年間30万台弱まで引き上げる。北本工場では一定の能力増強を事前に想定しており、その計画に沿って能増を進める。市場のニーズ次第では将来的に40万台まで生産能力を拡大することも検討している。
スバル 専務執行役員 経営企画本部長の江森朋晃氏は「米国でのHEVは期待が大きく反響もいいが、これまではガソリン価格で売れ行きが大きく変わる商品だった。この先どのように定着していくかはきちんと見極めていきたい。見極めを待って対応が遅れることがないよう、2027年に30万台弱まで生産できる体制を持つが、市場に合わせて供給していく」と説明した。
2030年に向けてはHEVの生産能力を一層強化し、エンジン車の生産比率も高める。電動化に向けた1.5兆円の投資計画も見直す。
これまで、EV(電気自動車)の販売比率について、スバルは2030年に50%と計画してきたが、2030年以降にずれ込む見通しだ。「EVの浸透が非常にスローダウンしている。環境規制の緩和でさらにその傾向が強まるだろう。エンジン車、HEV、EVのポートフォリオをどうするべきか見直しているところだが、発表済みのEVはきちんと導入していく。その先の戦略を検討している段階だ」(江森氏)
群馬県大泉町ではモータープール(車両の一時保管エリア)の跡地を利用して新工場の建設が始まっている。建設は計画通りに進めていくが、立ち上げる車種については市場の動向によって変動がある可能性があるという。
関税の影響は
2026年3月期第1四半期(2025年4〜6月期)の決算も発表した。売上収益(売上高)は前年同期比11.2%増の1兆2141億円、営業利益は同16.2%減の763億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同34.7%減の548億円で増収減益だった。販売台数の増加や価格改定が増収に寄与した。
米国の追加関税の影響は2025年4〜6月期の半ばから本格化したとしている。影響額は556億円だ。為替変動や原材料費の増加、米国の追加関税の影響など事業環境の変化で合計622億円のマイナス要因となったが、連結販売台数の増加と販売奨励金抑制を両立させたことで営業利益の減少を抑えた。
生産台数は前年同期比3.3%増の24.7万台、連結販売台数は同15.1%増の24.5万台だった。「フォレスター」「クロストレック」の売れ行きが好調だった他、新発売のHEVも高評価を得た。米国での生産台数は前年同期比2.0%減だが、これはカナダ向け車両の一部を日本生産に切り替えたことによるものだ。
2026年3月期通期(2025年度)の業績見通しは、売上高が前年度比2.3%減の4兆5800億円、営業利益が同50.7%減の2000億円、当期利益が同52.7%減の1600億円を計画している。2025年5月時点では業績見通しを未定としていたが、現時点で入手可能な情報を基に算定した。
生産台数は前回発表の計画値を据え置き、前年度比4.9%減の90万台を見込む。連結販売台数は上方修正し、市場ごと車種ごとに機動的な出荷調整を行い販売の効率を高め、同1.8%減の92万台(前回予想から2万台増)を目指す。国内販売は2024年度から6000台増、北米市場は同7000台減と設定している。
米国の追加関税の影響額は、2025年9月1日から関税が15%になることを前提に2100億円と見込んでいる。関税の影響による事業環境の変化や、EV自社生産に向けた工場での工事による生産の制約があるが、売り上げ構成の改善や原価低減で台数減少の影響を最小化することを目指す。
関税の対策についてスバル 代表取締役社長 CEOの大崎篤氏は「米国には40万台の生産能力があるが、全て使い切っているわけではない。フル生産に持っていくことも重要だが、サプライチェーンをどう考えていくかが肝になる。日本国内は強固なサプライチェーンがあるが、米国での生産増強にはサプライヤーとの相当な協力が必須になる。フル生産の先についてはまだ答えは出ていないが、しっかり検討していく」とコメントした。
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