マツダの2025年度の営業利益は前年度比7割減の見通し、関税が響く:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
マツダは2026年3月期第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比8.8%減の1兆997億円の減収、営業損益が461億円の赤字、親会社株主に帰属する四半期純損益は421億円の赤字となった。
重い関税負担
2025年度通期のグローバル販売台数は、前年度から3000台減の130万台で前年度並みを目指す。米国は関税の影響が広がり、混乱が続くと予想して同8%減(3.5万台減)の40万台を見込んでいる。その減少を日本、欧州、中国、その他市場でカバーする。生産台数は第1四半期で減少したが、2025年度通期としては第2四半期から第3四半期にかけて増加していく計画だ。
2025年度の関税負担は、通期の営業利益において1452億円の減益要因となる見通しだ。日本から輸出する自動車と部品に対する関税15%、メキシコからの輸出分に対する関税25%を前提に、前年度の出荷台数で算出すると影響額は2333億円に上る。仕向け地の変更やアラバマ工場の稼働率引き上げなどの対応により、影響額を1452億円まで抑える。そこからさらに台数構成やコストの改善、固定費削減などで影響を吸収し、関税負担を60%以上吸収することを目指す。
「交渉に携わった関係者には敬意と感謝を伝えたいが、日米間の関税が従来の2.5%から15%に引き上げられた負担は足元では非常に重い。これが長期的に継続するベースであるという前提で、地域経済やサプライチェーン、雇用を守りながら、中長期的な経営効率向上を目指したい」(マツダ 代表取締役社長の毛籠勝弘氏)
米国市場は、2025年3〜4月に加えて7月にも駆け込み需要があり、全需は想定よりも力強いと毛籠氏は説明。米国アラバマ工場は生産台数の95%を米国内で販売する他、同工場で生産するCX-50の販売最大化にも取り組む。販売奨励金は高水準だった前年よりも削減されているという。メキシコから米国に輸出する商品の出荷調整も行う。メキシコの生産拠点も一定の稼働を確保するため、収益性が厳しいモデルを日本に移管するなどさまざまな対応を検討する。
また、2025年度は新型CX-5の販売が欧州からスタートする他、EV(電気自動車)の「マツダ6e」の販売も9月から欧州で始まるため、成長を見込んでいる。新型CX-5は構造的な原価低減活動をフルに適用されており、収益に貢献すると見込む。日本では、首都圏へのマーケティング投資などブランド強化の取り組みで前年から販売を増やす。商品改良を実施した「CX-60」が好調で、「CX-80」も販売増加に寄与すると見込む。
マツダ 代表取締役専務執行役員兼CFOのジェフリー・エイチ・ガイトン氏は「2025年度は、変動費を3年間で3%または1000億円削減する『フェーズ2』の取り組みで最初の成果が表れる。また、今期は150億円の改善だが、今後さらに増加すると見込む。1000億円のコスト削減に向けて60%のめどがたっており、引き続き集中的に取り組む」とコメントした。固定費は前年度比で400億円の削減を目指す。
生成AI活用の専任組織が発足
生産性と競争力の向上に向けて、生成AI(人工知能)を活用した業務改革にも本格的に取り組む。2025年9月から生成AI活用の専任組織を全社横断で立ち上げる。400人体制で、オペレーションのスピードアップや生産性向上を社内に浸透させる。
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