DMG森精機は2025年8月1日、オンラインで記者会見を開き、2025年度上半期(同年1〜6月)の決算概要を発表した。
データセンター向けで大型案件、防衛でも各国に動き
2025年度上半期の売上高は前年同期比13.7%減の2275億円、営業利益は同73%減の65億円だった。連結受注額は2486億円で、前年度下期(2024年7〜12月)と比べて8.4%増となった。機械の受注平均単価は8080万円となり、2024年度の7100万円と比較して14%増となっている。2025年6月末時点の機械受注残は2332億円だった。
DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏は「データセンタ用のバックアップ電源などの大きな装置の加工案件がわれわれのドイツ製の大型機械の受注に寄与している。通信衛星関連の投資も活発で、航空機やミサイルのエンジン向けも好調だ。防衛向けは各国で動いている」と語った。
2025年通期の見通しである連結受注5300億円、売上高5100億円、営業利益380億円は据え置いた。同社では長期経営目標として、2030年度に8000億円の売り上げを目指している。
「既に仕込みはしている。2030年に売れる機械というのは、既に作っているか、設計に取り掛かっている機械であり、何の機械をどの地域でどんなユーザーに売ればいいかは分かっている。政府調達では長期契約も結んでおり、2026年には全ての機械がクラウドにつながり始める。付加価値を高めながら目標を達成していきたい」(森氏)
好調な米州向け、米国大統領が決めたなら米国側が負担を
米国の相互関税において、日本の関税率は15%に決まった。同社では、基本的にはユーザー負担とする。ただ、ソフトウェアや工具など米国内で調達できるものもあり、実際に関税の影響を受けるのは、機械本体などの一部だという。
「米国の大統領が決めた話なのだから、米国側が負担するのが“道理”だ。例えばターンキープログラムなら日本からの輸入する機械本体が1億円だとしても、現地でのエンジニアリングフィーでさらに1億円くらいかかることもある。そのため、関税がかかるのは全体から見れば一部だ。ただ、15%と決まったことで、止まっていた案件が動き出した。2025年7月も良かったが、8月、9月とまた上がっていく見通しだ」(森氏)
2025年4月には、AM(Additive Manufacturing、積層造形)事業のさらなる強化を目的に、DMG森精機Additiveを設立した。DMG森精機第二本社の奈良商品開発センタ(奈良県奈良市)には、同月にはDED(Directed Energy Deposition、指向性エネルギー堆積法)方式と、SLM(Selective Laser Melting、選択的レーザ溶融法)方式のAM機を5台並べたAMイノベーションセンタを開所している。
「SLM方式のAM機を購入するユーザーが増えており、AMイノベーションセンタは多い日には2、3件の訪問がある。日本では工具業界や複雑な流路を作る冷却装置、補修も含めた金型、めっきからの置き換えなどでニーズがある。ようやくユーザーが、10、20年とアフターサービスを続けられる、真の工作機械メーカーが作るAM機を欲しくなってきた。非常に手応えを感じている」(森氏)
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