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製造業の経済安保対応、サプライチェーン多元化が進む一方で未対応も「約6割」:ものづくり白書2025を読み解く(3)(3/3 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2025年版ものづくり白書」が2025年5月30日に公開された。本連載では「2025年版ものづくり白書」の内容からDXや競争力などについてのポイントを抜粋して紹介している。第3回では、経済安全保障を踏まえた持続的成長への考え方について取り上げる。
リスク分析の対象は「サプライチェーン」が7割以上
「経済安全保障に関する観点のリスク分析」を「実施している」とした回答をさらに深掘りする。どういう観点でリスク分析を行っているのかという問いに対し72.6%が「自社の事業に関わるサプライチェーン」と回答した。次いで「各国の輸出管理を含む規制や政府支援の政策動向」(58.2%)、「各国、地域の地政学環境」(48.8%)が続いている。

経済安全保障に関するリスク分析を行っている観点[クリックで拡大] 出所:2025年版ものづくり白書内のアクセンチュア「令和6年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」
リスク分析の対象期間としては「2〜5年程度」を見通して実施している企業が最も多かった。一方で、6年以上の長期目線での分析を実施している事業者は、1割程度にとどまっている。

経済安全保障に関するリスク分析の見通し期間[クリックで拡大] 出所:2025年版ものづくり白書内のアクセンチュア「令和6年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」
さらに「自社の事業に関わるサプライチェーン」について、意識しているサプライチェーンの範囲を聞いた。その結果、川上側、川下側ともに、直接の取引先、または2〜3社先までの把握にとどまっている事業者がそれぞれ5割弱を占めた。4社以上先まで考えてリスク分析を行う企業は川上側、川下側ともに1割未満となっている。
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