欧州電池規制に対応、自動車/蓄電池の“日本版”サプライチェーンデータ連携始動:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
自動車メーカーや日本自動車部品工業会、電池サプライチェーン協議会などが設立した「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」は、自動車や蓄電池のサプライチェーン企業間でデータ連携を行えるサービス「トレーサビリティサービス」を開発し提供を開始するとともに、会員企業の募集を開始した。
自動車メーカーや日本自動車部品工業会、電池サプライチェーン協議会などが設立した「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」(以下、ABtC)は2024年5月16日、2025年後半から導入されると予想される欧州電池規制のカーボンフットプリント宣言に対し、自動車や蓄電池のサプライチェーン企業間でデータ連携を行えるサービス「トレーサビリティサービス」を開発し提供を開始するとともに、会員企業の募集を開始した。
自動車と蓄電池のサプライチェーン情報を企業間で共有
ABtCは、自動車や蓄電池サプライチェーン上の企業間で安全、安心にデータ連携を行い、環境規制への対応と社会課題の解決を業界協調で行うことで産業全体の競争力の向上につなげるための団体だ。経済産業省、情報処理推進機構(IPA)などが推進する「ウラノス・エコシステム」を活用し、トレーサビリティーサービスはその第一弾ユースケースとなる。
設立に向けては、経済産業省なども支援をしている。経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の須賀千鶴氏は「2つの大きな政策の流れがある。1つは、世界的に信頼性のある自由なデータ流通を目指すDFFT(Data Free Flow with Trust)を進める動き、もう1つが従来経済産業省で訴えてきた『Connected Industries』など産業間でデータ連携を進めていく動きだ。これらを実現するための必要基盤としてウラノス・エコシステムの構築に取り組んだ」と語っている。
ウラノス・エコシステムは、Society5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合することで経済発展と社会的課題の解決と産業発展を両立する人間中心の社会)の実現に向け、必要な要素や体制などの整備を進める一連のイニシアチブを指す。具体的には、人手不足や災害激甚化、脱炭素への対応といった社会課題の解決に向けて、企業や業界、国境を跨ぐ横断的なデータ共有やシステム連携を行うための、日本版のデータスペース(データ共有圏)の確立を目指している。単一の業界や企業が持つ情報だけでは解決が難しい問題などに対し、このデータスペースを経由してデータを相互活用することで、さまざまな課題解決につなげていく。
実際の仕組みについては、経済産業省をはじめとする関係省庁や情報処理推進機構(IPA)のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに、異なる複数の情報処理システムの連携の仕組みに関して、アーキテクチャの設計、研究開発と実証、社会実装、普及などへの取り組みを進めているところだ。
ABtCは、こうした枠組みを生かしつつ、欧州電池規制などの環境要求に対応するために主要自動車メーカー、日本自動車部品工業会(JAPIA)、電池サプライチェーン協議会(BASC)などが運営主体となり、設立された。会員企業として参画している自動車メーカーは、いすゞ自動車、カワサキモータース、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、三菱ふそうトラック・バス、ヤマハ発動機、UDトラックスの14社だ。理事会は自動車メーカーから3人、BASCから1人、JAPIAから1人の5人とし、少人数で迅速な意思決定を行えるようにしている。
欧州電池規制をはじめとした環境規制強化への対応
ABtC設立の大きなきっかけとなったのが、欧州電池規制である。欧州電池規制が導入されると、欧州で販売される全ての電動車について、車載電池のカーボンフットプリント(以下CFP)の開示が自動車メーカー、蓄電池メーカーに義務付けられることになる。そのため、各企業では従来のやり方だけでは製品を販売できなかったり、部品や材料を調達できなかったりする可能性がある。さらに、企業秘密を含むデータの提供を求められるケースも増え、これらのデータをどう扱うかという課題に直面している。そこでABtCが設立され、第一弾として欧州電池規制に対応し、カーボンフットプリント情報などを共有するトレーサビリティーサービスを2024年5月7日にリリースした。
ABtC 代表理事の藤原輝嘉氏は「カーボンニュートラルや人権、資源循環などに関連して、企業の機密に関する情報開示を求める規制などが増えてきている。これらを満たすことができなければ取引が行えないようなケースも今後考えられるが、各企業が個別に対応するのは難しい面もある。そこで各企業の枠組みを超えて容易でありながら安全、安心に連携できるような仕組みが必要になる」と考えを述べている。
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