製造業の経済安保対応、サプライチェーン多元化が進む一方で未対応も「約6割」:ものづくり白書2025を読み解く(3)(2/3 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2025年版ものづくり白書」が2025年5月30日に公開された。本連載では「2025年版ものづくり白書」の内容からDXや競争力などについてのポイントを抜粋して紹介している。第3回では、経済安全保障を踏まえた持続的成長への考え方について取り上げる。
経済安全保障に関する取り組み手法やコストが課題に
経済安全保障に関して今後強化したい取り組みとしては、既に取り組みが進んでいる「情報管理体制やサイバーセキュリティの強化」(55.9%)と「部素材調達先の変更や多元化」(54.7%)がそのまま1位、2位となった。その他の順位も基本的に大きな違いはないが、「直接の取引先、最終的な需要先、提携先の精査」(42.3%)、「自社の持つ重要技術や秘匿すべき技術の特定と管理強化」(40.5%)など1位、2位以外の回答比率が上がっており、上位2つに集中する形ではなくなっている点が特徴だ。

強化したい経済安全保障の取り組み[クリックで拡大] 出所:2025年版ものづくり白書内のアクセンチュア「令和6年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」
一方、経済安全保障に関する取り組みを進めていく上での課題については「自社における事業リスクの把握とリスク評価手法の理解」(52.0%)と「サプライチェーン上の取引企業の動向の把握」(51.5%)、「社内での理解や協力」(44.9%)、「費用対効果を踏まえた予算の確保」(42.8%)が上位となった。まだまだ手法や進め方でも確立されたものがない様子や、コストをどうかけてよいかをつかみかねている様子がうかがえる。
国際情勢の情報収集は約4割が行っているものの他の実施率は低い
では、経済安全保障への取り組みを以下の6つに分けた場合、どのプロセスで特に課題が多いのだろうか。
- 国際情勢に関する情報収集
- 経済安全保障に関する観点のリスク分析
- 経済安全保障に関する戦略/方針の策定
- 経済安全保障に関する具体的な対応策の検討
- 経済安全保障に関する具体的な対応策の実施
- 実施結果を踏まえたリスク分析、戦略/方針、対応策へのフィードバック
最も進んでいるのは「国際情勢に関する情報収集」で約4割が実施している。他のプロセスは2番目に多かった「経済安全保障に関する観点のリスク分析」が17.5%となるなど、「実施している」が2割以下となっている。まだまだ積極的な取り組みが見られない状況だといえる。
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