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国内製造業の稼ぐ力向上に必要な「CX」 グローバルな組織力強化をものづくり白書2024を読み解く(1)(1/5 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。

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 日本政府は2024年5月に「令和5年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2024年版ものづくり白書)を公開した。

 ものづくり白書とは「ものづくり基盤技術振興基本法(平成11年法律第2号)第8条」に基づき、政府がものづくり基盤技術の振興に向けて講じた施策に関する報告書だ。2024年で24回目の策定となる。経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成しており、モノづくりに関する基礎的なデータや、その年の課題や政府の取り組みを掲載する第1部と、モノづくり振興施策集である第2部からなる2部構成となっている。

⇒過去の「ものづくり白書を読み解く」はこちら

「稼ぐ力」向上のためにはCXとDXが鍵に

 本論に入る前に、2023年版ものづくり白書の振り返りと、2024年版ものづくり白書のキーワードをチェックしておきたい。2023年版ものづくり白書では、現場の強みを生かしつつ、サプライチェーンの最適化に取り組み、競争力強化を図ることが重要であると指摘していた。加えて、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現にも不可欠なDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資拡大、イノベーション推進によって生産性向上や利益増加を促進し、所得への還元を実現する好循環を創出することが重要だとも述べていた。

 2024年版ものづくり白書では日本製造業の「稼ぐ力」に言及し、DXに加えて「CX(コーポレート・トランスフォーメーション)」が不可欠になると説明。CXとは組織体制を根幹から変革することを意味する。第1回となる本稿では、2024年版ものづくり白書の「第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題」の「第5章 製造業の『稼ぐ力』の向上」をまとめる形で、CXによる経営/組織の仕組み化と、DXによる製造機能の全体最適と事業機会の拡大の必要性について詳しく見ていきたい。

グローバルでの売上高は過去最高益を更新するも、利益率は低水準

 製造事業者の現状を確認すると、国内投資の重要性が高まる一方、日系大手製造業の海外売上比率はこの20年間で急増し、過半を海外で稼ぐ構造になっている(図1)。その結果、グローバルでの売上高は大きく拡大し、連結ベースで過去最高益を更新した。一方で、利益率は低水準のままとなっている(図2、3)。

図1:主要日米欧製造業企業の海外売上比率[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図1:主要日米欧製造業企業の海外売上比率[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書[クリックして拡大]
図2:主要日米欧製造業企業の純利益率[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図2:主要日米欧製造業企業の純利益率[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図3:主要日米欧製造業企業のレバレッジ比率とROE[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図3:主要日米欧製造業企業のレバレッジ比率とROE[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 2024年版ものづくり白書では、低利益率の要因の1つに、グローバル展開に伴う経営の複雑性の高まりを挙げている。調査結果からも、事業や地域が多角化するほど収益性が下がる傾向にあり、特に日本は米国や欧州と比較して、全体の利益水準自体が低い(図4)。

図4:多角化度と収益性の関係[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図4:多角化度と収益性の関係[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 2024年版ものづくり白書では、日本企業と米欧企業との違いとして、海外子会社も含めた企業グループを横断する仕組みに着目。多くの日系製造業が、日本から海外現地法人に駐在員を送り込む一方、本国からのガバナンスはほとんどない「連邦経営」を行っているとし、その結果、それぞれの子会社に経理や人事などの機能が重複し、固定費が膨張する一方で全社横断的なシステムやルールの整備/統一が進まず、非効率的な状況を生み出していると指摘している(図5)。

図5:我が国企業における本社と子会社の関係[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図5:我が国企業における本社と子会社の関係[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

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