国内製造業の稼ぐ力向上に必要な「CX」 グローバルな組織力強化を:ものづくり白書2024を読み解く(1)(2/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
グローバルな競争力強化に求められる3つのコア機能のCX
日本の製造業が今後グローバルで稼ぐ力を強化していくためには、海外現地法人を含めた経営資源の最大化と最適な活用を目指して「日本+現地法人」という分断された連邦経営から脱却し、国内と海外の組織がシームレスにつながる仕組みを整える必要がある。
そのために求められるのが、人材や資金、データなど、グローバルスケールで重要な経営資源配分を扱うファンクションを中心としたCXだ。2024年版ものづくり白書では、特にファイナンス、人事(HR)、DX/ITの3つのコア機能の役割を定義し直し、組織の在り方を再設計、再構築することが好ましいと指摘。現状を踏まえつつ、3つのコア機能の目指すべき姿について次のように述べている。
まず、ファイナンスの現状については、過去の実績の分析や予算管理など、「資本が過去どこにあったのか」を集計し、取りまとめる会計報告に多くのリソースが投入されていると分析(図6)。本来的には「資本は将来どこにあるべきか」を考える、ファイナンス領域におけるデータドリブン経営の実現に貢献することが望ましく、FP&A(Financial Planning & Analysis)を中核に、市場環境、競争環境の変化に応じたシナリオプランニングなど、データに基づく機動的な経営判断を実施するためのビジネスパートナーとしての働きが求められるとしている(図7)。
HRについては、本社から駐在員を海外現地法人に派遣する「セントラル人事」から、法人トップに現地人材を登用する「マルチナショナル人事」へと移行する中で、「現地のことは現地に」という放任経営になりがちな状況が生まれていると指摘。加えて、現状は給与や採用などに関するHRオペレーションや、人事制度に関するCoE(Center of Excellence)など、バックオフィス的な役割が主となっていると分析している(図8)。
人材の希少性が高まる中で、今後は(1)OD&TD(Organizational Development & Talent Development)、(2) HRBP、(3)CoE、(4)HRオペレーションをインフラとして整備し、グローバル全体での人材の最適配置に向けた可視化やシステム、データベースの整備といった、基盤となる仕組みを整えていくことが必要だとしている(図9)。
また現状では、DXの中で一般的なIT部門は、ITシステムを提供するバックオフィス的な役割にとどまっていると分析する。本来CIO(Chief Information Officer)/CDO(Chief Digital Officer)組織には、BPR(Business Process Re-engineering)を含め、組織全体のビジネスプロセスの革新をリードする役割や、デジタルによってビジネスパートナーとして新たな価値を創出するためのイネーブラーとしての役割が求められるとする。その上で、今後はまず全社目線で業務プロセスを可視化し、IT部門の主導によりコーポレート起点による全社目線でのデジタル戦略を策定し、実行することが求められるとする(図10)。
このように、企業がグループ全体を上手にマネジメントできていないことが、「稼ぐ力」に影響を及ぼしている現状が示唆されている。これまで国内と海外とで分断され、個別最適化されてきたヒト/モノ/カネ/データに関わる共通基盤をグローバルで横串を通して整備していくことが求められる(図11)。
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