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国内製造業の稼ぐ力向上に必要な「CX」 グローバルな組織力強化をものづくり白書2024を読み解く(1)(3/5 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。

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製造機能の「全体最適」を目指すDXの取り組みは進まず

 2024年版ものづくり白書においても、DXは引き続き日本製造業に重要な取り組みの1つとして位置付けられている。しかし、日本の製造事業者の現状をみると、DXの取り組み目的は「業務効率化・生産性向上」が特に目立ち、成果は「情報共有の促進」「コストの削減」が多い。

 前述した「稼ぐ力」の向上の視点に立つと、上記の取り組みに加えて「売上の向上」や「新規事業への展開・新規顧客の開拓」につながるような、「新商品・サービス・事業の開発」「既存の商品・サービス・事業の高付加価値化」などに取り組んでいくことも重要だ(図12)。

図12:DXの取り組み目的及び成果[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図12:DXの取り組み目的及び成果[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 さらに製造事業者におけるDXの取り組み領域をみると、依然として「個別工程のカイゼン」に関する取り組みが多く、経営戦略の遂行に向けて他部門とも連携するような「製造機能の全体最適」を目指す取り組みは少ない。また、新たな製品/サービスの創出により新市場を獲得し、「事業機会の拡大」を目指すDXの取り組みはさらに少ない(図13)。

図13:DXの取り組み領域別推進状況[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図13:DXの取り組み領域別推進状況[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 この背景にあるDXを推進する上での主な課題は、リソースと情報不足だ。前述のDXの取り組み目的に関する調査において「取り組んでいない」と回答した事業者を対象とした追加調査によれば、「DXに取り組むためのリソースが不足している」が最多であり、次に「DXに取り組むための情報が不足している」が多い(図14)。

図14:DXに取り組んでいない又は成果が出ていない理由[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図14:DXに取り組んでいない又は成果が出ていない理由[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 また、事業部や組織の壁を越えた業務、意思決定の最適化を図る上での課題についても「社員の意識改革」「最適化するためのリソースの確保」のリソース関係を挙げた回答が最多となっている。これに「全社で最適化されたあるべき姿やビジョンの策定」「最適化を目指すための具体的な方法やプロセスが不明」など情報面での課題が続く(図15)。

図15:事業部や組織の壁を越えた業務、意思決定の最適化を図る上での課題[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図15:事業部や組織の壁を越えた業務、意思決定の最適化を図る上での課題[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 個社最適化に向けた業務、意思決定のためには、組織間のコミュニケーションにある壁を無くすことも重要だ。しかし、組織や部門間で「連携ができている/壁がない」とする回答は約30%にとどまっている(図16)。その理由としては「対面でのコミュニケーションにより情報共有が図られている」が約70%と多く、デジタル技術の活用による情報共有は約20%にとどまっている(図17)。

図16:組織・部門間におけるコミュニケーションの実態[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図16:組織・部門間におけるコミュニケーションの実態[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図17:組織や部門間において「連携ができている/壁がない」と感じている理由[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図17:組織や部門間において「連携ができている/壁がない」と感じている理由[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

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