大阪万博で生まれた未来のタオル RFIDで広がる繊維製品の新たな可能性:材料技術(2/2 ページ)
ピエクレックスと村田製作所は共同でRFIDの技術セミナーを開催。RFID技術の紹介や2025年大阪・関西万博で販売している”洗濯可能なRFIDタオル”における技術的な工夫などについて説明した。
RFIDを活用した新たなタオル
思い出を紡ぐピエクレックスRFIDハンドタオル/フェイスタオルは、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」(会期:2025年4月13日〜10月13日)で販売されている。両製品は、2025年大阪・関西万博に設置されているパビリオン「Better Co-Being」の世界観をモチーフに開発されたもので、綿やPIECLEX、村田製作所が開発したRFIDマイクロタグなどで構成される。
RFIDマイクロタグは、村田製作所が培ってきた積層技術などを活用して、RFIDインレイタグを小型化した製品だ。同製品は、RFIDインレイタグと比べて、サイズが1.2mm角〜と小さく、読み取り距離が短くて、耐久性が高い。
村田製作所 事業インキュベーションセンター RFID事業推進部 ビジネスディベロップメント課の福原将彦氏は「RFIDマイクロタグの周りを樹脂製シリコンラバーで包み込むことで耐洗濯性も実現している。当社が行った検証の結果、100回の洗濯に耐えられることが分かっている。樹脂製シリコンラバーを活用することで、角が立ちやすい電子部品部分も露出しないので触れてもケガをしにくい」と話す。
加えて、HF帯向けで、近距離でのデータ通信を可能にする無線通信技術「NFC技術」が採用されている。NFC技術と各RFIDマイクロタグに組み込まれたユニークIDにより、スマートフォンをタグにかざすと専用Webサイトにアクセスでき、抽選で賞品が当たる仕掛けを実現した。
福原氏は「シリコンラバーでRFIDを包み込むという技術はこのタオルのために導入した。量産をするにはコストが高すぎる可能性があるため、本当にシリコンでいいのかという検討をする必要がある」と語る。
今後の展開について
現在、村田製作所は、流通業界の棚卸し作業などでRFIDが専用端末で読み込まれている状態の解消を目的に、UHF帯RFID技術を普及させるためのグローバルアライアンス「RAIN」に参画し、スマートフォンでUHF帯RFIDの読み取りが行える環境の構築を推進している。これにより、棚卸などの複数の作業をスマートフォンで行える環境の実現を目指している。
ピエクレックスは、RFID技術の活用による、不要になった製品の回収率アップやアパレル企業における衣料品回収率の見える化を目標に掲げている。「ユニークIDの活用では、一般消費者にスマートフォンでRFIDタグをタッチしてもらうことで、ポイントを付与したり、製品開発ストーリーを提供したり、といった付加価値提供も模索している」(井上氏)。
また、生産から堆肥化までの一連の流れを1つのタグから確認できるようになれば、P-FACTSの展開もより強固にできるという。具体的には、使用されている生地や使い終わった繊維製品の回収ルートの提示、サプライチェーン、堆肥化から利用先までの追跡などが行えるようになる。これにより、一般消費者が、製品におけるライフサイクルを確かめられるようになる。
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