異種材料接合を用いた高出力THzデバイスの量産技術を確立:組み込み開発ニュース
OKIは、NTTイノベーティブデバイスと共同で、異種材料接合を用いた高出力テラヘルツ(THz)デバイスの量産技術を確立した。2026年の量産化を目指す。
OKIは2025年6月10日、NTTイノベーティブデバイス(NTTデバイス)と共同で、異種材料接合を用いた高出力テラヘルツ(THz)デバイスの量産技術を確立したと発表した。2026年の量産化を目指す。
同技術では、InP(インジウムリン)系のUTC-PD(単一走行キャリアフォトダイオード)を、放熱性に優れたSiC(シリコンカーバイド)基板上に接合する。その際、OKIの独自技術となるCFB(Crystal Film Bonding)を適用すると、デバイスの動作に必要な部分だけを素子レベルで選択的に接合できる。従来の全面接合に比べて接合歩留まりが約50%から100%近くまで向上するため、材料の無駄削減による低コスト化にもつながる。
素子レベルで結晶薄膜を分割した後、素子を選択的に接合することで、従来プロセスでは除去していた結晶薄膜も有効活用できるようになった。
NTTデバイスは、CFB技術で結晶薄膜を接合したSiCウエハーに対し、UTC-PDを形成してチップ化を実施。チップ化後のデバイス評価では、単素子において1dB飽和出力が1mW以上を達成し、高出力かつ優れたリニアリティを実証した。さらに、従来の接合プロセスによるデバイスと比較して暗電流が約3分の1に低減した。
テラヘルツ波は電波と可視光線の中間の波長となる電磁場で、生体への負担のない非破壊検査やセキュリティ用途、大容量ワイヤレス通信システムへの応用が期待できる。一方、テラヘルツ波は大気中の減衰が大きいことから高出力なデバイス開発が求められている。
今後両社は、6G通信技術の商業化や非破壊センシング技術の広範な活用に焦点を当て、産業界や学術界との連携を強化していく。
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