グラフェンを用いてTHz電気信号の制御に成功、NTTがGHz超えの高速信号処理で成果:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
NTTが、THzレベルの周波数を持つ超高速の電気信号に制御に向けた基礎技術の開発で成果を得たと発表。グラフェン上に電荷密度のプラズマ振動であるプラズモンの波束を、パルス幅として世界最短となる1.2psで電気的に発生させるとともに伝搬を制御することに成功したという。
日本電信電話(NTT)は2024年7月22日、光波と電波の中間に位置するTHz(テラヘルツ)レベルの周波数を持つ超高速の電気信号に制御に向けた基礎技術の開発で成果を得たと発表した。炭素原子のシート状物質であるグラフェン上に電荷密度のプラズマ振動であるプラズモンの波束を、パルス幅として世界最短となる1.2ps(ピコ秒)で電気的に発生させるとともに伝搬を制御することに成功したという。
今回の研究成果の実験概略図。パルス幅が1.2psのTHz電気パルスをグラフェンデバイスに印加し、グラフェンプラズモン波束を発生/伝搬させ、その実時間波形をサブピコ秒の時間分解能で計測した[クリックで拡大] 出所:NTT
一般的に0.1T〜10THzの電磁波を指すTHz領域の技術開発は長年未開拓領域とされてきたが、自由空間を伝搬するTHz波を使った高速な無線通信やセンシング、イメージングは徐々に社会実装への道筋が見えつつある。その一方で、回路中のTHz電気信号の制御技術の開発はそれほど進んでおらず、現時点では集積回路で取り扱える信号帯域はGHz(ギガヘルツ)帯で律速されている。
今回の発表で着目したのが、グラフェン中における自由電子の電荷密度の振動である「グラフェンプラズモン」である。グラフェンプラズモンはTHz波を極めて小さい領域に閉じ込め、かつ外部から電気的に波長などの性質を制御できるため、THz波のフィルターやセンサーへの応用を目指した研究が行われている。これらの特性を回路中のTHz電気信号でも扱えるようになれば、GHz帯を超えた新たな超高速のエレクトロニクス技術を築くことが可能になる。ただし、そもそも電気的にTHz領域のグラフェンプラズモンを発生/制御できるのかということすら明らかになっていなかった。
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