超音波センサーの感度が20倍に、OKIのLEDプリンタ技術が単結晶薄膜と融合:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
OKIとKRYSTALは、超音波センサーなどの圧電MEMSデバイスの性能の飛躍的な向上を可能にする「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表。同ウエハーを用いてMEMS超音波センサーを試作したところ、現行の一般的なMEMS超音波センサーと比べて20倍以上の感度が得られたという。
OKIとKRYSTALは2022年8月17日、東京都内で会見を開き、超音波センサーなどの圧電MEMS(微小電気機械システム)デバイスの性能の飛躍的な向上を可能にする「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表した。KRYSTALが商用化している圧電単結晶薄膜を剥離した後、OKIがLEDプリンタの印字ヘッドの製造に用いているCFB(Crystal Film Bonding)技術によってSOI(Silicon on Insulator)ウエハーに接合することで実現した。同ウエハーを用いてMEMS超音波センサーを試作したところ、現行の一般的なMEMS超音波センサーと比べて20倍以上の感度が得られたという。2022年11月に圧電MEMSデバイスメーカー向けに同ウエハーのサンプル提供を、2023年にはさまざまな要求に応じたカスタムウエハーの提供を開始する計画である。
会見の登壇者。左から、KRYSTAL 取締役・CTOの小西晁雄氏、同社 代表取締役社長の山口十一郎氏、OKI コンポーネント&プラットフォーム事業本部開発本部 本部長の佐藤義則氏、同本部 LED応用開発部第一チーム チームマネージャーの谷川兼一氏[クリックで拡大]
OKI コンポーネント&プラットフォーム事業本部開発本部 本部長の佐藤義則氏は「デジタル機器の進化とともにMEMS市場は拡大しており、1兆円を超える市場規模になっている。圧電薄膜の市場がその10%程度の約1000億円として、シェア10%となる売上高100億円を早期に達成できるように事業を展開していきたい。既に複数の顧客から興味をいただいており手応えも感じている」と語る。
KRYSTALの単結晶薄膜とOKIのCFB技術を融合
今回の圧電単結晶薄膜接合ウエハーは、KRYSTALが「世界唯一の技術」(同社 代表取締役社長の山口十一郎氏)と自負する単結晶薄膜の製造技術と、OKIがLEDプリンタの印字ヘッド用LEDアレイで実用化し、15年以上の量産実績を持つCFB技術の組み合わせによって実現された。
KRYSTALは、シリコンウエハー上に独自のバッファー層を設けることにより、MEMSをはじめとする電子デバイスの高性能化で求められる単結晶薄膜を、高品質に成長させる技術を有している。「シリコン上で成長したバッファー層が“ナノ・ピラミッド”化し、格子定数をセルフマッチングする形で、さらに上層に来る薄膜を単結晶化する」(KRYSTAL 取締役・CTOの小西晁雄氏)という。
KRYSTALが8インチシリコンウエハー上に形成した単結晶薄膜。左から、ニオブ酸リチウム、窒化アルミニウム、白金、PZTの順で並んでいる。PZTは既に商用化しており、ニオブ酸リチウムと窒化アルミニウムは開発中だ。白金は、バッファー層として用いられており、この上に単結晶薄膜を成長させていくことになる[クリックで拡大]
現行のMEMSデバイスに用いられている圧電薄膜材料には多結晶が用いられていることが多い。しかし、多結晶は単結晶のように結晶の成長方向がそろっていないため、圧電特性を最大限に引き出しきれていない。KRYSTALは、MEMSデバイスの圧電薄膜材料として広く利用されているPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の単結晶薄膜をシリコンウエハー上に成長させた製品を量産出荷しており、圧電MEMSデバイスの製造にも活用されている。
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