再生モノづくりへの変革と難しさ、新しい工場の形を探るパナ宇都宮工場:リサイクルニュース(2/2 ページ)
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは、宇都宮工場の一角において、検査済み再生品事業の“再生”を担う中核拠点としてリファービッシュ工程を拡張した。2025年6月17日からは同工程の見学を受け入れている。
再生ならではのデータ蓄積、目指す新しい工場の形
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション 宇都宮工場 工場長の竹田恭介氏は再生事業を始めたきっかけを「リサイクル工場を訪問した際に、家電が樹脂と金属に分けられ、材料ベースでリサイクルされていく中で、まだまだ使える新しい家電が混ざっているのを目にした。われわれのモノづくりの技術を用いて、これらを救い出すことができないかと考えた」と語る。
宇都宮工場では、洗濯機、テレビ、食器洗い乾燥機、Blu-rayレコーダー、ポータブルテレビ、デジタル一眼カメラ、次亜塩素酸空間除菌脱臭機の再生を行っている。再生能力は年間1万台となっている。
量産工場として、従来は材料を調達し、工場で組み立て、商品をユーザーに届ける役割を担ってきた。そこに対して、「形あるものを不具合を修正しながら使い続ける、循環型の社会、サーキュラーエコノミーの考え方が必要ではないかと感じた。“再生モノづくり”として、部品レベルまたは商品レベルで再生を行う活動も、工場の中に必要だと考えた」(竹田氏)。
例えば、食器洗い乾燥機の再生工程は、傷や打痕などの外観検査から始まり、専用洗剤によるクリーニングや清掃、汚れや消耗した部品の交換、動作確認、最終確認、梱包の流れで行われる。量産工場のノウハウを活用して、量産工場と同等の設備、仕様、手順で再生を行う。絶縁耐圧抵抗試験などの安全検査などを実施し、安全性や機能を確認する。また、有害物質を含有していない洗剤を使用する。
“再生視点”の活用も行う。これまでも宇都宮工場では、ユーザーから商品が返品されてくると、なぜ返品されたのかを解析し、その結果を量産工場にフィードバックすることで再発防止に役立ててきた。また、解析が終わった商品は材料ベースでリサイクルされていた。再生を施すことで、傷がつきやすい、汚れやすい、交換しづらいといった再生工程ならではのデータが積み上がり、企画、設計部門にフィードバックできる。それによって「パナソニックの次の商品がより環境に即したものに変わっていく」(竹田氏)。
一方で、再生ならではの難しさも存在する。量産は計画通りに数量を必ず生産する。作業内容は標準化され、決められた手順で作業していけば製品が完成する。
「ユーザーから返品があった分だけ再生するため、われわれで数量をコントロールできない。また、最初に不具合などを確認して、状態に応じて判断して作業するスキルが求められる。壊れた箇所だけ直すため、部品の調達にも難しさがある。当初は再生率100%を追い求めたが、収支が合わなくなってしまうため、今は収支と再生率のバランスを取りながら再生を行っている。今後は、量産を行ってきたわれわれの知見、スキルを生かして、再生率を高めながらコストを抑え、より効率的な再生モノづくりで環境負荷を抑えていきたい」(竹田氏)
宇都宮工場のリファービッシュ工程の見学は「Panasonic Factory Refresh」のWebサイトから予約可能となっている。
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