最大の成長機会は「量産にあり」 製造業での真の普及を狙う3Dプリンタの巨塔:3Dプリンタニュース(2/2 ページ)
ストラタシス・ジャパンは、米Stratasys CEOのヨアブ・ザイーフ氏の来日にあわせ、東京都内でメディアラウンドテーブルを開催。グローバルにおける3Dプリンタ市場の動向や同社のポジション、そしてサステナビリティに対する取り組みについて、CEOが自ら説明した。
サステナビリティにも注力
さらに、ザイーフ氏はStratasysが「全ての製造業は持続可能でなければならない」という考えに基づき、ライフサイクル全体を視野に入れた製品開発と企業活動に取り組んでいることを明らかにした。
同社では、サステナビリティに特化した専任ユニットを早期に設置したり、製品開発プロセスにおいて「持続可能性のための設計(Design for Sustainability)」を取り入れたりするなど、環境に配慮したモノづくりを推進している。
その代表的な事例として、ザイーフ氏は、使用済みPA12パウダー(樹脂粉末)を同社の量産用途向けSAF方式3Dプリンタ「Stratasys H350」で再利用可能にするソリューション「SAF ReLife PA12」を紹介した。従来のSLS方式では、使用済み粉末の多くが再利用できず、廃棄せざるを得ないという課題があった。これに対し、Stratasysが開発したSAF技術をベースとするReLifeソリューションにより、約70%の粉末を高品質な造形に再利用することが可能となった。
ザイーフ氏は「サステナビリティは一過性の取り組みではなく、われわれの企業活動そのものに組み込まれている。今後もこの分野で多くのプロジェクトを推進していく」と述べ、サステナビリティを軸とした継続的な技術革新への意欲を示した。
ハードからソフト、材料まで 幅広い製品ポートフォリオを展開
続いて登壇したシャルマ氏は、Stratasysが展開するハードウェア、ソフトウェア、材料に関する幅広い製品ポートフォリオの強みを説明するとともに、直近で発表された新製品群について紹介した。
まず、産業用FDM方式3Dプリンタの最新モデル「Stratasys F3300」を取り上げた。同機は小〜中量生産に対応し、製造スループットおよび信頼性を大幅に向上させた設計となっている。さらに、部品製造単価の削減にも寄与する装置として位置付けられている。
FDM材料の新製品としては、ESD(静電気放電)耐性を備え、ポリカーボネートと同等の機械的強度およびHDT(荷重たわみ温度)140℃の耐熱性を持つ「FDM PC-ESD」を紹介。加えて、PolyJet(J8シリーズ)対応の新材料「ToughOne」にも触れた。同材料は、耐衝撃性、耐久性、耐熱性、柔軟性に優れ、セルフタッピング、スナップフィット、リビングヒンジといったアプリケーションに適しているという。
その他、射出成形に匹敵する精度、再現性、表面仕上げを特長とするP3方式3Dプリンタ「Origin Two」や、P3方式に対応する新たなESD対応樹脂「Loctite 3D IND3380 ESD」、さらに治具設計機能を強化したソフトウェア「GrabCAD Print Pro」についても説明があった。
GrabCAD Print Proに搭載された治具設計機能は、Stratasysが提携を発表したドイツのソフトウェア企業trinckle 3Dの治具設計ソフト「fixturemate」との統合によって実現されたものである。これにより、「20分以内にカスタム固定治具の設計が可能になる」(シャルマ氏)という。
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