ジメチルエーテルの燃焼エネルギーを利用した人工筋肉アクチュエーターを開発:組み込み開発ニュース
中央大学は、ジメチルエーテルの燃焼エネルギーを利用した人工筋肉アクチュエーター「HADEC」の開発に成功した。従来の空気圧システムでは達成困難だった、高応答性を確認した。
中央大学は2025年5月26日、ジメチルエーテルの燃焼エネルギーを利用した人工筋肉アクチュエーター「HADEC(High-Response Artificial muscle using Dimethyl Ether Combustion)」の開発に成功したと発表した。
HADECは、マッキベン型のゴムチューブに可燃性ガスのジメチルエーテル(DME)と空気を混合した気体を充填し、着火によって急激な内部圧力を発生させて収縮運動を生む構造だ。ラッチやブレーキのような補助機構が不要で、駆動指令から平均4msで収縮を開始、約40msで最大出力に達し、従来の空気圧システムでは達成困難だった高応答性を確認した。試作機では最大180Nの力を発揮し、空気圧回路により10Hzまでの繰り返し動作も安定して行えることを実証した。
連続動作時の温度変化についても検証したところ、1Hzおよび5Hzの点火周波数では温度上昇が穏やかで、冷却機構なしでも安定運用が可能となった。一方、着火頻度の高い10Hzでは急激に温度上昇し、約10秒後に80℃まで上昇した。80℃に達した後、15秒間の冷却時間を設けることで再起動が可能なことを確認した。
将来的には、ソフトロボットや介護支援機器、建設現場での検査装置など、高速高出力を必要とする場面での応用が期待できる。現在は複数のHADECを束ねた筋束型アクチュエーターの制作に取り組んでおり、今後は制御性や耐久性を含めた性能の向上を図る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ブリヂストンのゴム人工筋肉ロボットハンドが進化、吸着機構の5本目の指を追加
ブリヂストンの社内ベンチャーであるソフトロボティクス ベンチャーズは、「国際物流総合展2024」において、同社のゴム人工筋肉を用いたロボットハンド「TETOTE」に吸着機構を新たに追加した「TETOTE and」を公開した。ゴム人工筋肉に身をゆだね、ゆだねられる!? 無目的空間「Morph inn」が開業
ブリヂストンの社内ベンチャーであるソフトロボティクス ベンチャーズが、東京・表参道のイベントスペース「seeen」において、同社のゴム人工筋肉を用いた柔らかいロボット「Morph」を用いた都市の無目的室「Morph inn」を開業している。補助力強化とスリム化を両立した外骨格型アシストスーツを販売
イノフィスは、外骨格型アシストスーツ「マッスルスーツExo-Power」の販売を開始した。空気圧式の人工筋肉を従来より細くしながらも補助力を強化しており、最大補助力は27kgfとなっている。人工筋肉の光造形3Dプリントを可能にする技術を開発
岐阜大学らは、光照射を利用して自在な形状に作製できる人工筋肉の開発に成功した。光造形3Dプリンタに組み込み、生体材料で駆動するマイクロロボットやソフトロボットの製造が期待できる。柔らかい人工筋肉のダイナミクスを用いて高精度の長さ推定に成功
東京大学とブリヂストンは、空気圧アクチュエーターに基づいた人工筋肉について、人工筋肉のダイナミクスと機械学習法を組み合わせることで、加圧駆動時にリアルタイムで高精度に長さが推定できることを示した。油圧ならトン単位の力も出せる、ブリヂストンのゴム人工筋肉
ブリヂストンは、「Japan Robot Week 2018」において、アシストスーツや歩行トレーニング装置などに最適な空気圧式ゴム人工筋肉を展示した。