ゴム人工筋肉に身をゆだね、ゆだねられる!? 無目的空間「Morph inn」が開業:ロボット開発ニュース
ブリヂストンの社内ベンチャーであるソフトロボティクス ベンチャーズが、東京・表参道のイベントスペース「seeen」において、同社のゴム人工筋肉を用いた柔らかいロボット「Morph」を用いた都市の無目的室「Morph inn」を開業している。
ブリヂストンの社内ベンチャーであるソフトロボティクス ベンチャーズは2024年5月17〜25日の8日間、東京・表参道のイベントスペース「seeen」において、同社のゴム人工筋肉(ラバーアクチュエータ)を用いた柔らかいロボット「Morph(モーフ)」を用いた、都市の無目的室「Morph inn(モーフ イン)」を開業している。同社のゴム人工筋肉は、ロボットハンドをはじめ実用的な用途への事業展開を先行して進めてきたが、2023年12月の「2023国際ロボット展」で披露した「umaru」を皮切りにゴム人工筋肉の可能性を広げる取り組みを進めており、今回のMorph innは3回目となる。
ブリヂストンが研究を重ねてきたゴム人工筋肉を用いて、動物や自然現象など自然界にあるさまざまな動きを収録/再生することをコンセプトに誕生したのがMorphだ。Morph innでは、大きなMorphの上に横たわり、小さなMorphを抱きかかえることで、柔らかいロボットに自らをゆだね、ゆだねられる時間を過ごせる。目的のない時間を持ちにくい忙しい都市生活の中で、あえて無目的な時間を過ごして無意識に制御してしまっている思考を解放し、豊かな時間を生み出すことが狙いだ。Morph innは、ブルヂストンとクリエーター集団であるKonelの共創プロジェクトとなっている。
イベントスペース「seeen」の1階が入り口になっており、チェックイン(左)とチェックアウト(右)のカウンターも用意されている。チェックインカウンターのとなりから地下1階に降りて「Morph inn」の体験スペースへ[クリックで拡大]
大きなMorphは、8本のゴム人工筋肉を内部に並べて組み込み、表面を東レの人工皮革「ウルトラスエード」で覆った最小単位のユニットである「Minimum」を3つ並べた「Basic」の構成となっており、サイズ感はシングルベッドに近い。小さなMorphは、6本のゴム人工筋肉を用いた掛布団のようになっており、合計で30本のゴム人工筋肉が使用されている。
大きなMorphのゴム人工筋肉は収縮が主な動きとなる通常タイプで、その収縮から来る揺れや振動によって、大きなMorphに身をゆだねている人に自然界の動きを伝える仕組みだ。一方、小さなMorphのゴム人工筋肉は、屈曲する動きが可能な板バネタイプであり、身をゆだねられる側の人によりダイナミックに自然界の動きが伝わるようになっている。
ゴム人工筋肉に反映する自然界の動きは、映像から動きの特徴点を抽出して得た多次元の時系列データを、独自技術によって1次元の時系列データに変換して生成したアルゴリズムに基づいている。チューブとスリーブの2層構造となっているゴム人工筋肉は、生物の胎動や呼吸、潮の満ち引きのような自然界のデータを基に有機的に動作するので、生物とも機械とも異なるMorphならではの息遣いが生まれるという。アルゴリズム生成のためのセンシングやデータサイエンスでTengun-labelがパートナーとして協力している。
ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ CEOの音山哲一氏は「2023国際ロボット展で展示したumaruを分岐点として、ゴム人工筋肉を用いたソフトロボティクスの取り組みをウェルビーイングの方向でトライしやすい環境が生まれつつある。どうしても産業界にとどまりがちなロボットというものを一般ユーザーと近しい場に持ってくるのにどうすべきかはさまざまな議論があるが、視覚でも聴覚でもない第3の感覚である触覚に訴え掛けられるゴム人工筋肉の強みを、今回のMorph innでも生かせていると感じている。今後も引き続きソフトロボティクスの可能性を広げるため、パートナーを増やしながら取り組みを広げていきたい」と述べている。
なお、Morph innの体験は専用Webサイトから事前予約する必要があるが、約300の予約枠は9割以上埋まっている。このため、現在追加枠を検討しているとのこと。入場のみの場合は予約は不要だ。
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