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タイヤの水平リサイクルはなぜ難しいか、ブリヂストンが狙う「世界初」の技術脱炭素(1/2 ページ)

ブリヂストンは2022年10月17日、同社が手掛けるタイヤ製品の水平リサイクルの取り組みに関する説明会を開催した。使用済みタイヤを水平リサイクルする意義や、同社がパートナー企業と共同で取り組む研究内容などを紹介した。

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 ブリヂストンは2022年10月17日、同社が手掛けるタイヤ製品の水平リサイクルの取り組みに関する説明会を開催した。使用済みタイヤを水平リサイクルする意義や、同社がパートナー企業と共同で取り組む研究内容などを紹介した。

使用済みタイヤを「戻す」

 ブリヂストンは企業コミットメントである「Bridgestone E8 Commitment」の中で、2050年までにサステナブルなソリューションカンパニーとなるという目標を掲げるとともに、その中核を構成する事業領域として「タイヤサーキュラービジネスモデル」の実現を推進している。これは、タイヤを「創って売る」「使う」に加えて、「戻す」の3フェーズをバリューチェーンでつなぐことで、顧客による、GHG(温室効果ガス)プロトコルにおけるスコープ1〜3のCO2排出量をトータルで削減するというものである。

 特に「戻す」のフェーズに関わるリサイクル事業の展開を加速させるため、ブリヂストンは2022年4月に「EVERTIRE INITIATIVE」と名付け、使用済みのタイヤをリサイクルにつなげる活動を展開中だ。

日本ではサーマルリカバリーが主流

 ブリヂストンによると、日本における使用済みタイヤの回収率は約94%と高い。一方で日本では、回収したタイヤの用途に関して、廃棄物から熱を得るサーマルリカバリーが占める割合が約63%となっている。これは国際的に見ても比較的高い水準だ。サーマルリサイクルはCO2排出量の削減と資源循環の観点から見た際に課題がある。

 これまではサーマルリサイクルが使用済みタイヤのリサイクルの主要な“出口”となっていたが、社会全体でカーボンニュートラルを含めサステナビリティ実現に向けた動きが強まる中、同手法に頼るのは限界が見えつつある。このためブリヂストンでは、使用済み製品を再資源化し、再び同じ製品を作る水平リサイクルの推進を目指している。


日米欧で比較した使用済みタイヤのリサイクルの現状[クリックして拡大] 出所:ブリヂストン

 ただし、タイヤの水平リサイクルは幾つかの課題がある。その1つが、タイヤに使われている原材料の分離が困難だという点だ。特に問題となるのがタイヤのゴム部分である。ブリヂストン 先端材料部門長の大月正珠氏は「トレッドとサイドウォールに使われているゴム素材は、さまざまな性能を発揮するよう、天然ゴムや合成ゴム、カーボンブラック/シリカなどさまざまな原材料が使用されており、それらの比率はナノレベルで制御されている」と指摘する。そのため、この構造を単に壊してしまうリサイクルの手法では、元製品と同じ性能を得ることが難しくなる。


水平リサイクル推進に当たっての課題[クリックして拡大] 出所:ブリヂストン

 従って、水平リサイクルの推進に当たっては、タイヤのパーツ部材を使えるものと使えないもので区分けして、必要に応じてマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの手法を使い分けていく必要がある。だが、使用済みタイヤを合成ゴムや原材料に戻す取り組みは、世界で見ても基礎研究が進んでいない。このためブリヂストンは今後この分野でも研究を進めていくとしている。

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