タイヤの水平リサイクルはなぜ難しいか、ブリヂストンが狙う「世界初」の技術:脱炭素(2/2 ページ)
ブリヂストンは2022年10月17日、同社が手掛けるタイヤ製品の水平リサイクルの取り組みに関する説明会を開催した。使用済みタイヤを水平リサイクルする意義や、同社がパートナー企業と共同で取り組む研究内容などを紹介した。
ENEOSなどと共同研究を進める
ブリヂストンは水平リサイクルの実現に向けて、国内外の企業や研究機関とのパートナーシップ構築も推進している。
日本国内では、精密熱分解によるケミカルリサイクルでブタジエンなどのタイヤ原材料や再生カーボンブラックなどを得る研究をENEOSと、低温分解解重合による高収率のリサイクル法の研究を東北大学や産業技術総合研究所、ENEOS、日揮ホールディングスとそれぞれ進めている。なお、これらの研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業のプロジェクトとして採択されたものである。
精密熱分解によるケミカルリサイクルの研究では、使用済みタイヤを熱分解することで油化し、その油を精製/軽質化した上で化学品に変換することを目指している。この内、油化のプロセスはブリヂストンの技術を、精製/軽質化と化学品変換のプロセスはENEOSの技術をそれぞれ活用する。使用済みタイヤから、合成ゴムの主原料であるブタジエンを回収する割合を高めるとともに、分解や精製、変換を一気通貫で実施する処理技術の確立を目指す。2030年までに量産化を視野に入れた大規模な実証実験を行い、その後、年産で数万から10万トン規模で事業化を図る計画だ。
低温分解解重合による高収率のリサイクル法の研究では、専用触媒を用いることで低温熱分解した液状ポリマーを解重合し、イソプレンや再生カーボンブラックを高収率で得ることを目指している。ブリヂストン リサイクル事業準備室長の岸本一晃氏は「実現すれば世界初の技術で、挑戦的なプロジェクトだ」と語る。2030年までにパイロット機でイソプレンなどを高収率で得る実証実験を行う計画だ。
これらの取り組みを通じてブリヂストンは、現時点で使用済みタイヤの用途の大半を占めるサーマルリカバリーからケミカルリサイクルへと段階的に転換することを目指す。岸本氏は「仮に日本市場にある使用済みタイヤ約60万トンを、ケミカルリサイクルで処理した場合、約146万トン相当のCO2排出量削減効果が得られる」と説明した。
国外では、炭素回収やガス発酵技術によってエタノールなどを獲得する研究を米国バイオ企業であるLanzaTechと、熱分解による再生カーボンブラックの回収技術開発をタイヤのケミカルリサイクルを手掛ける米国企業のDelta Energyとそれぞれ共同で実施している。なお、Delta Energyとの研究成果は既にブリヂストンの製品にも生かされているという。
今後の展望について岸本氏は、「タイヤの水平リサイクルには共創できるパートナーが必要だ。共創パートナーを拡大して、『タイヤがタイヤに生まれ変わる未来』を実現していく」と語った。
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