目標地点に誤差5m以内での着陸を目指す、ロケット垂直離着陸実験:宇宙開発
将来宇宙輸送システムは、ロケット垂直離着陸実験「ASCA 1ミッション」を発表した。今回実施する「ASCA 1.0」では、高度0.1km以上まで機体を上昇させ、目標地に誤差5m以内での着陸を目指す。
将来宇宙輸送システムは2025年5月28日、ロケット垂直離着陸実験 「ASCA 1(アスカワン)ミッション」を発表した。また同日、開発面で協業するJFEエンジニアリングとの基本契約調印式を執行し、開発拠点「将来宇宙輸送システム 鶴見ベース」も公開した。
ASCAミッションは、将来宇宙輸送システムが独自に進める日本発の再利用型ロケット開発プロジェクトだ。今回実施するASCA 1.0ミッションは、高度0.1km以上まで機体を上昇させ、目標地に誤差5m以内での着陸を目指す。
ロケットは、Ursa Major TechnologiesのHadleyエンジンを2基搭載。機体質量の約40%を3Dプリンタで製造する。また「モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)」により、離着陸の誘導時に高精度な制御ができる。自律飛行安全システムも備えており、機体の健全性や飛行経路の異常を検知した際は自律的に安全処置を実施する。
打ち上げ着陸実験は2025年内を予定している。場所は、アメリカのニューメキシコ州にあるスペースポート・アメリカ。日本の民間宇宙スタートアップ企業によるアメリカでのロケット垂直離着陸実験は、初の試みとなる。
今後、2027年上期にはサブオービタル飛行実験の「ASCA 1.1」を、2028年上期には衛星軌道投入実験の「ASCA 1.2」を実施するなど、将来の実用化に向けて段階的に計画を進めていく。
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