超小型衛星のフォーメーションフライトで「衛星通信3.0」へ、ISTが事業報告会:宇宙開発(1/2 ページ)
インターステラテクノロジズ(IST)が同社の新たな経営体制や新型ロケット「ZERO」の開発進捗状況、新たな取り組みとなる衛星開発事業などについて説明した。
インターステラテクノロジズ(IST)は2024年7月4日、東京都内で事業報告会を開催し、同社の新たな経営体制や新型ロケット「ZERO」の開発進捗状況、新たな取り組みとなる衛星開発事業などについて説明した。ZERO初号機の打ち上げは「早ければ2024年度内」(同社 代表取締役CEOの稲川貴大氏)を目指しており、超小型衛星のフォーメーションフライトによる高速大容量通信が可能な衛星開発も「数年の時間軸でビジネスに持っていく」(稲川氏)方針である。
事業報告会に登壇したISTの経営陣。左から、同社 取締役 COOの熱田圭史氏、代表取締役CEOの稲川貴大氏、VP of Launch Vehicleの中山聡氏、取締役 CFOの辻高広氏[クリックで拡大]
2013年に創業したISTは、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを経て、現在は小型衛星のに対応可能なより大型のロケットであるZEROの開発を進めているところだ。ロケット開発にとどまらず、自社ロケットに搭載して打ち上げることで強みを発揮する通信衛星を開発する衛星事業や、これまで同社ロケットの射場となってきた北海道大樹町が運営する北海道スペースポート(HOSPO)の運営会社であるSPACE COTANにも出資するなど、事業内容も拡大している。従業員数は170人を超え、拠点も大樹本社(北海道大樹町)の他、帯広支社(北海道帯広市)、東京支社(東京都江東区)、東北支社(福島県南相馬市)に広がっている。
ISTは、この事業拡大に対応して経営体制を強化すべく、2024年6月に新たな役員人事を発表している。今回の事業報告会では、代表取締役CEOの稲川氏に加えて、新たな常勤取締役に就任したVP of Launch Vehicleの中山聡氏、COOの熱田圭史氏、CFOの辻高広氏が登壇。ZEROを中心としたロケット開発については中山氏が、ISTのロケットや衛星の採用を推進する事業開発については熱田氏が、スタートアップとしての成功に必要なファイナンスや人事体制などについては辻氏が説明した。
ロケットと衛星による垂直統合のビジネスモデルを強みに
新体制のISTが現在注力しているのはZEROの初号機の開発である。中山氏によれば、エンジンや推進剤タンク、構造、メカトロニクス、アビオニクス、無線といったサブシステムの技術課題を洗い出すサブスケール試験はほぼ完了しており、2024年夏からはこれらをロケットとして組み上げた上で行うフルスケール試験に移行するという。その後、統合/ステージ試験を経て、ZERO初号機の打ち上げとなる。打ち上げ時期は、早ければ2024年度内としているものの、HOSPOの整備時期などを考慮すると2024年度以降にずれ込む可能性は高い。
事業開発では、ロケット開発だけでなく通信衛星も自社で開発することによる垂直統合のビジネスモデルの強みを追求していく考えだ。HOSPOを運営するSPACE COTANとの連携も含めて、顧客との契約、衛星の搭載、打ち上げウィンドウ確保を一気通貫で対応し、顧客ファーストのサービス体制を構築する。
ファイナンスでは、海外投資家や国内の大型投資家/機関投資家、トップクラスの地方銀行やメガバンクからの融資を増やしていくよう働きかけを強化する。従業員も、現在の170人超にとどまらず、衛星事業の人材強化を含めてさらに増やしていく。グローバル化、ダイバーシティー推進も視野に入る。
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