PETボトルリサイクルの救世主 液相重合で高品質に再生できるワケとは?:素材/化学インタビュー(4/4 ページ)
アルテックがNGR製PET樹脂再生装置の展開に注力している。子会社のアルテック新材料も導入し、再生PET製造事業を立ち上げた。アルテック新材料に、これらの動きの背景や装置の特徴、再生PET製造事業などについて聞いた。
アルテック新材料の再生PET製造事業
MONOist 国内におけるP-REACTの導入実績について教えてください。
横田氏 国内では2台の導入実績がある。1台目はアルテック新材料のモデルプラントに導入されたものだ。2台目のP-REACTはプリフォーム成形機が接続されたタイプだ。
このタイプは、液状の使用済みPETをそのままプリフォームラインに搬送できる。そのため、冷却工程や成形前の乾燥工程などを省略可能で、使用電力やCO2排出量を減らせる。NGRの調べによれば、アルテック新材料に導入したP-REACTと比べて国内2台目のタイプはCO2排出量を20〜30%削減できる。
MONOist アルテック新材料の概要とP-REACTを活用している再生PET製造事業について教えてください。
横田氏 当社は、1999年10月1日にアルパレットとして設立した企業で、2014年11月1日にアルテック新材料に社名を変更した。従業員は60人で、第1工場でプリフォーム事業を、第2工場でリサイクル原料事業を展開しており、主にPETボトル用プリフォームやリサイクルPET(r-PET)の製造/販売を行っている。
横田氏 リサイクル原料事業の1つとして再生PET製造事業を実施している。再生PET製造事業では主にアルカリ洗浄済みのPETボトルフレークを基にリサイクルPETペレットを生産しており、2024年にリサイクルPETペレットを発売した。2025年中にはこのリサイクルPETペレットを用いて製造したプリフォームを販売開始する予定だ。現在はPETボトルを利用する飲料メーカーなどの意見を集めており、関心も寄せられている。
MONOist 複数回のリサイクルが行われたPETボトルを原料としたペレットを用いて製造したプリフォームをPETボトルに成形すると、明度が下がるという課題がありますが、どういった対策を講じていますか。
横田氏 その課題の原因はPETボトルに添加剤として調色剤が利用されているからだ。調色剤は、活用することでPET樹脂の黄色を軽減し、透明度を向上させる。一方、調色剤が使用されたPETボトルがリサイクルされ続けると、明度が低下し色合いが暗くなってしまう。この問題を解決するためのテストや評価などの取り組みも進めている。
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