リサイクル工程のみで剥がれ個別デザインに対応するPETボトル印刷技術を開発:リサイクルニュース
キリンホールディングスのパッケージイノベーション研究所は、リサイクルに対応する技術としてPETボトルに直接印刷できる「PETボトル ダイレクト印刷技術」を開発し、PETボトルリサイクル推進協議会に申請したと発表した。
キリンホールディングスのパッケージイノベーション研究所は2023年8月29日、リサイクルに対応する技術としてPETボトルに直接印刷できる「PETボトル ダイレクト印刷技術(Recyclable Direct PET bottle Printing technology、RDP技術)」を開発し、PETボトルリサイクル推進協議会に申請したと発表した。
ラベル印刷に必要な製版は不要
従来のインクでPETボトルに直接印刷すると、リサイクル工程でインクが剥がれず、リサイクル後のPET樹脂へ着色が残ったり、透明性や品質が損なわれる恐れがあった。そのため、PETボトルリサイクル推進協議会の定めるガイドラインでは、直接印刷を禁止している。
そこで、パッケージイノベーション研究所は、富士フイルムが開発した剥離インクを使用し、そのインクをリサイクル工程で剥離できる技術を開発した。この技術により、RDP技術で印刷した表示やバーコードなどは、利用者の飲用時には剥がれず、リサイクル工程の洗浄時に剥がして、分離することに成功した。
富士フイルムの剥離インクは、樹脂との密着力を制御することで、リサイクル工程の洗浄液中で剥がれ、樹脂と分離できる。
RDP技術では、キリンホールディングス独自の「デジタル印刷技術」を採用しており、従来のラベル印刷に必要な製版が不要だ。これにより、ペットボトル1本ごとに個別のデザインの印刷も可能で、多様なニーズに対応できる。
さらに、PETボトルに直接印刷できるため、これまでのシュリンクラベルの基材となる樹脂フィルムが不要となり、ペットボトル1本当たりのプラスチック使用量はシュリンクラベルとの比較で約8%、ラベルの使用による温室効果ガス(GHG)排出量のうち約84%の削減が行える。
加えて、高度なデジタル印刷技術により、原材料表記やバーコードのような微細な印刷も可能で、ペットボトルの透明感も損なわれない。フルカラーで視認性やデザイン性に優れた表現も行える。
今後の展開について、キリングループは、環境負荷軽減の取り組みの一環として、「キリングループプラスチックポリシー」を策定し、PETボトルの資源循環の推進やワンウェイプラスチックの削減、PETボトル原料の持続性向上を目指している。キリンホールディングスは、RDP技術を自社利用に留めず、ライセンスアウトなどの手段も含めて広く展開していくことで、“プラスチックが循環し続ける社会“の早期実現を目指す。
また、顧客のラベルを剥がす負担を軽減することでリサイクルをより手軽にするとともに、ラベルレスボトルでも魅力的なデザインの創出を通じて、CSV(顧客や社会と共有できる価値の創造)経営を推進していく。
RDP技術の開発経緯
PETボトルのラベルは、ブランドを訴求するとともに、商品として販売する際の製造者情報や賞味期限、原材料など定められた表示のために必要とされている。使用済みPETボトルを回収してPETボトルに再生する「ボトルtoボトル」を推進するためには、ラベルを分別して回収をする必要があるが、特に駅や商業施設など家庭以外から回収されるペットボトルは、分別する手間や回収の負担からラベルが分別されない場合が多く、PETボトルの資源循環の課題となっている。
そこで、キリンホールディングスは“プラスチックが循環し続ける社会”の実現に向けて、必要な表示は残しながら、ラベルやシールに使うプラスチックを削減し、同時に顧客がラベルを分別する負担も軽減する技術として、日本ではまだ実用化されていないRDP技術を開発した。
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