軽インホイールEVの実現へ、Astemoが12インチ空冷ダイレクト駆動システムを開発:人とくるまのテクノロジー展2025
Astemoは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、軽自動車に搭載可能なインホイールモーターとなる12インチサイズの空冷ダイレクト駆動システムを出展した。
Astemoは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、軽自動車に搭載可能なインホイールモーターとなる12インチサイズの空冷ダイレクト駆動システムを出展した。同社はこれまでに16インチと19インチのダイレクト駆動システムを開発しており、今回の12インチを新たに加えて2030年ごろの実用化を目指す方針である。
今回展示した12インチ空冷ダイレクト駆動システムは、モーターの回転部分の外表面全体に放熱フィンを配置した「ロータリーフィン構造」を採用している。ホイールに収められるモーターの回転を利用して放熱量を増大させられるため、油冷や水冷などの特別な冷却機構を必要としない。1輪当たりの最大出力は13kWで、連続定格でも同サイズでトップクラスとなる5.5kWを実現した。最大トルクは370Nmである。これを4輪に搭載した場合、軽自動車タイプのEV(電気自動車)に求められる駆動性能を満たすことが可能だという。
なお、Astemoはこれまでに16インチと19インチのダイレクト駆動システムを開発している。最大出力と最大トルクは16インチが70kW/900Nm、19インチが100kW/1700Nmで、冷却機構としては油冷を採用していた。また、インバーターをホイール内に組み込んでいるため、16インチ/19インチというサイズに加えて厚みもある。一方、今回の12インチ空冷ダイレクト駆動システムはインバーターを組み込んでおらず、モーターのみの構成となっているためインバーターは車両側に搭載することになる。
12インチ空冷ダイレクト駆動システムのもう1つの特徴は、易解体集中巻コイルを採用している点だ。近年のEV向け走行モーターではヘアピンコイルを用いているが、リサイクル時のステーターコアからコイルを取り外す解体作業が難しいことが課題になっている。今回開発した易解体集中巻コイルは、高占積率でありながら、ステーターコアに設けた穴の中にコイル部品を組み込む構造になっているため、分解性とリサイクル性に優れているという。
なお、Astemoのダイレクト駆動システムは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業「次世代モーターの開発」の助成事業を通じて開発が進められている。
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