古い仕組みで勝てないのは当たり前、最新SCMで新風を起こす米国3PL企業の挑戦:サプライチェーン改革(4/4 ページ)
設備もシステムも古く、変革が進まない――。日系企業では古い設備やシステムを使い続けることが美徳とされているが、米国では最初から“理想の業務”を前提に設計された物流企業が急成長を遂げている。創業わずか数年で全米10位に躍進したArcadia Cold Storage & Logisticsは、サプライチェーンを統合するデジタル基盤など最新技術を用いることで、業界の常識を破る急成長を遂げている。同社CIOに話を聞いた。
古いコールドチェーンのインフラ環境を打破
アルカディアコールドが、ここまでデジタル技術を活用したITシステムの新しさを強みとして成長してきたことを説明してきたが、自社で保有する施設と設備の新しさについても十分な強みになるという。
日本でも同様だが、米国でもコールドチェーン関連設備は築30〜40年のものが多く、長ければ70年くらいになるものもある。一方でアルカディアコールドの施設は2〜3年以内に建てられたもので、冷凍冷蔵庫に最適な仕組みや設計を取り入れたものとなっており、安全面や効率面で、多くの利点を発揮できるという。
「われわれは明確に古いコールドチェーンのインフラ環境を打破することを目指している。これは、サステナビリティの観点からも強みだ。冷凍冷蔵倉庫の運用コストで2番目に大きいのが電気代で、それは冷却装置の稼働コストの影響が大きい。古い冷蔵庫では最新設備に比べて電力効率が低く、冷却装置の稼働コストに大きな違いが出る。物流プロセスやドック(搬入出エリア)の設計も最新の冷凍冷蔵倉庫に最適化したものを採用しており、優位性を発揮できる」とラフェール氏は訴える。
アルカディアコールドでは、今後「米国で最も優れたコールドストレージ企業」という目標に向け、さらに規模とサービス品質の向上に取り組んでいく方針だ。「われわれのビジョンは明確だ。規模については米国で3番目以上、サービス品質では業界1位を目指す」とラフェール氏は意気込みを語る。
その中で課題として挙げるのが「時間」だ。「われわれは施設を自社で建設して成長する戦略を採用している。他社の買収で成長するわけではないため、最適な土地を探し、購入し、建設し、最適に運営できるようにするまでには、一定期間が必要になる。Blue Yonderなどを通じて先進デジタル技術を活用しながら、それをいかに短い時間で実現できるかが今後のポイントだ」(ラフェール氏)としている。
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