パナソニックGのAI関連売上30%のカギを握るブルーヨンダー、その戦略とは:CES 2025(1/2 ページ)
コロナ禍以降、サプライチェーンマネジメントにも新たな風が起こりつつある。AIエージェント機能などを取り入れようと開発を進めるブルーヨンダーの取り組みについて、同社 EVP兼Chief Strategy Officerのウェイン・ユーシー氏に話を聞いた。
パナソニックグループは、エレクトロニクスを中心とした最先端テクノロジーの展示会である「CES 2025」(2025年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)のオープニングキーノートでAI(人工知能)関連売上比率を2035年までに30%に引き上げる宣言を行った。
その中で大きな役割を果たすのが、パナソニック コネクト傘下でSCM(Supply Chain Management)プラットフォームを展開するBlue Yonder(ブルーヨンダー)である。SCMシステムに求められる役割が、より複雑かつ多様で広範なデータを扱わざるを得なくなる中、AIエージェント機能などをシステムに取り入れようと開発を進めるブルーヨンダーの戦略について、同社 EVP兼Chief Strategy OfficerのWayne Usie(ウェイン・ユーシー)氏にCES 2025会場で話を聞いた。
バラバラだったサプライチェーン情報をプラットフォームで統合
MONOist 製造業のビジネス環境が大きく変化する中、サプライチェーンを取り巻く環境の変化をどう見ていますか。
ユーシー氏 サプライチェーンを取り巻く環境はここ数年でさらに大きく変化したといえる。大きなきっかけとして、パンデミック(感染症の世界的な拡大)があった。多くの製造業が商品供給に問題を抱え、変動が大きな中で需要と供給のバランスが崩れる状況が続いた。多くの企業がサプライチェーンのオペレーションに問題があることを実感したといえる。
従来のSCMシステムは、サプライチェーンを真の意味で一貫した形で管理できるわけではなかった。個別のシステムがバラバラに動いており、データもそれぞれが抱えている状況がほとんどで、サイロ化が進んでいた。特に計画系と実行系は組織も分断されており、データの一元的な活用はできなかった。そのため、パンデミックのように、影響範囲が広くダイナミックは変化には対応できず、問題を大きくしてしまっていた。
これらの経験を踏まえ、需要の変化に即応できる供給体制を作るためには、需要から供給までの情報を一貫して管理できるようにし、全体最適につながるような判断をする必要がある。そうした考えそのものは以前からS&OP(Sales and Operations Planning)など上位レイヤーで進められていたが、より現場に近い実行領域の情報も含めて、一体化していく必要が出てきた。
この考えから、ブルーヨンダーではサプライチェーンに関わる情報を一気通貫で取りまとめ最適化するために、End to Endで情報を取り扱えるSaaS型のプラットフォームの開発を進め、展開を開始している。計画系から実行系まで一貫してカバーし、需給計画から倉庫管理まで一元的に情報を管理することができる。従来はアプリケーションやデータがバラバラな状態だったが、1つの基準で統合し、「本当の意味での最適化」ができるようになった。
CES 2025のパナソニックグループブースで大画面で紹介されたブルーヨンダーの特徴。サプライチェーンデータのリアルタイムの可視化、整列されたアクション、信頼できるAIによるインサイトなどを得られるとしている[クリックで拡大] 出所:パナソニックグループ
技術的な課題解決と、サプライチェーン情報を統合するニーズの高まり
MONOist サプライチェーンに関わるさまざまな情報を統合するという考え方は以前からあったと思いますが、なぜこうした仕組みができなかったのでしょうか。これまでと現在とでどのような違いがあるとお考えですか。
ユーシー氏 まず、技術的な問題をクリアできるようになったということが言える。例えば、ブルーヨンダーでは2022年にデータクラウド企業のSnowflakeとのパートナーシップを発表したが、これにより仕組みとして容易にさまざまなシステムや業界ごとのデータを一元的に扱うことができるようになった。サイロ化されたデータを統合できるようになり、全体最適な観点でデータを活用できるようになった。また、これらのデータを活用するAIエージェント機能も具体的に進められるようになった。従来はシステムごとに分けられたデータを効率的に統合して使えるようにする技術もなく、便利に引き出せるような技術もなかったため、実現したくでもできなかった。
もう1つの視点として、エンドユーザーのニーズの多様化が挙げられる。顧客要求を含めたさまざまな情報を集約、統合して、そこから最適な意思決定や判断につなげることが求められる。例えば、ある自動車メーカーは北米で1日に約1万台のクルマを作っているが、多くの顧客はこれらのクルマのカスタマイズを要求し、それぞれがユニークな機能を搭載することを望んでいる。これだけの台数のクルマのパーソナライズ化を効率的に実行するためには、顧客要望の把握やサプライチェーンにおける部品の手配、製造の対応など、複数のシステムをまたいだデータ活用が必須となる。こうした環境そのものが以前と比べて大きく変わった。
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