検索
インタビュー

古い仕組みで勝てないのは当たり前、最新SCMで新風を起こす米国3PL企業の挑戦サプライチェーン改革(3/4 ページ)

設備もシステムも古く、変革が進まない――。日系企業では古い設備やシステムを使い続けることが美徳とされているが、米国では最初から“理想の業務”を前提に設計された物流企業が急成長を遂げている。創業わずか数年で全米10位に躍進したArcadia Cold Storage & Logisticsは、サプライチェーンを統合するデジタル基盤など最新技術を用いることで、業界の常識を破る急成長を遂げている。同社CIOに話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

港湾関連施設の拡大、輸送管理の強化、情報可視化範囲の拡大

 アルカディアコールドでは今後さらに3つの方向性での成長を目指す。

 1つ目が「港湾型拠点の拡大」だ。アルカディアコールドでは、現在は顧客である小売り企業で必要とされる地域に倉庫を展開する「流通型」施設を中心に事業成長を続けている。ただ、今後は輸入される冷凍食材なども増えることから、港湾型のロケーションでの拠点展開を新たな成長につなげる。「既に港湾都市であるジャクソンビルに拠点を用意しているが、さらに港湾型施設を増やしていく」(ラフェール氏)。

 2つ目が、「輸送管理領域の強化」だ。現在は保有する冷凍冷蔵倉庫を基軸とした、倉庫管理が事業の中心だが、輸送管理の領域をさらに強化し、成長につなげていく考えだ。「倉庫への入荷、出荷の両方で輸送手配も行える機能などを提供し、サプライチェーン全体のカバー範囲を広げていく」とラフェール氏は述べている。

photo
輸送管理を強化する方針[クリックで拡大] 出所:アルカディアコールド

 3つ目が、「より多くの情報を顧客に提供すること」だ。「例えば、今でも顧客がわれわれの倉庫にある在庫や温度の情報を知ることはできるが、出荷後は第三者の運送業者の手に渡るため、温度管理や経路情報が見えなくなる。そこで、入庫時の温度、保管温度、出荷後に小売店に届いた際の温度とかかった時間などの情報を記録し、可視化することなどを計画している。コールドチェーンにとって温度管理は非常に重要だ。入庫から出庫、そして小売店に届くまで全ての工程で見える化することを目指している」とラフェール氏は今後の方向性を説明する。

 これらの強化にも、Blue Yonderとの協力を生かし、使用しているシステム基盤をフル活用していく方針だ。「港湾関連でのコンテナ管理機能や、輸送管理における輸送管理システム(Transportation Management System、TMS)などの機能も既にBlue Yonderに組み込まれているため、これらをフル活用していく方針だ。WMSともネイティブで統合できるために、スピード感や円滑性などで強みを発揮できると考えている」とラフェール氏は述べている。

 温度の追跡管理については、IoTデバイスをパレットに取り付けて、温度と時間、場所を追跡する仕組みの導入を検討する。これらのハードウェアと組み合わせたソリューションについては、Blue Yonderを買収したパナソニック コネクトのハードウェア技術の活用なども検討する。パナソニック コネクトとBlue Yonderのシナジー効果により、Blue Yonderが提供するクラウドインフラやサプライチェーンソリューションと、現場センシングに強みを持つパナソニック コネクトの先端技術を融合し、共通の顧客にメリットを提供し、オートノマスSCMの構築を目指す。

 「これらはまだ具体的な形ではないが、パナソニック コネクトの持つカメラと認識技術を生かし、映像による入出庫管理やトラックの管理を行うなど、一部で導入を行っているところも出てきている。倉庫内だけでなくヤードまで含めて可視化を実現できる」とラフェール氏は語る。

 さらに今後はAI(人工知能)技術についても積極的に取り入れていく方針だ。「既に一部では試験的に活用を進めている。例えば、倉庫内のセキュリティカメラをAIと連携させ、事故の予兆を検知したり、AIを使って在庫のリアルタイム把握で活用したりすることを検討している。さらに、請求処理の自動化などにも活用したいと考えている。われわれは3PL事業者として作業ベースで料金を請求しているが、AIによりどの作業が実施されたかをAIで自動的に確認できるようにする」とラフェール氏は述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る