古い仕組みで勝てないのは当たり前、最新SCMで新風を起こす米国3PL企業の挑戦:サプライチェーン改革(2/4 ページ)
設備もシステムも古く、変革が進まない――。日系企業では古い設備やシステムを使い続けることが美徳とされているが、米国では最初から“理想の業務”を前提に設計された物流企業が急成長を遂げている。創業わずか数年で全米10位に躍進したArcadia Cold Storage & Logisticsは、サプライチェーンを統合するデジタル基盤など最新技術を用いることで、業界の常識を破る急成長を遂げている。同社CIOに話を聞いた。
ベストプラクティスで、最初から理想の業務プロセスを実現
そこで、アルカディアコールドでは最初からサプライチェーン管理のために複数のシステムを使用するのではなく、統合した形で一元的な管理を行えるシステムに絞って選定を進めたという。その中で現在はBlue Yonderを全面的に採用している。Blue Yonderは、2021年にパナソニック コネクトの買収を受けたが、「オートノマスSCM」の実現を目指し、直近の2年間で約20億米ドルの投資をかけてサプライチェーン情報を一元的に統合できる次世代プラットフォームの開発を進めている。
ラフェール氏は「Blue Yonderを採用した理由は2つある」と語る。
「1つ目は、プラットフォームとしての革新性とそれに対するR&Dへの多額の投資だ。プラットフォームは採用すると変更できないが、システムが年月を経て古くなると競争力に影響が生まれる。革新とそれに対する投資を進める覚悟が見えることは採用を決める要因となった」(ラフェール氏)
そして2つ目の理由として挙げたのが、現場業務への理解の深さから来るソリューションそのものの完成度だという。「Blue Yonderには、3PL企業向けで必要なKPI(重要業績評価指標)などが組み込まれており、カスタマイズしなくても必要な情報の管理が行えた」とラフェール氏は述べている。
アルカディアコールドは新興企業であるため、Blue Yonderの過去の数多くのWMS(倉庫管理システム)などの導入で得られたベストプラクティス(過去の実績で最適だと評価されたやり方)をそのまま活用し、逆に業務をシステム側に合わせることで、効率的に進んだ業務プロセスを実現したという。
ラフェール氏は「Blue Yonderの過去の実績を生かすことを考え、カスタマイズせずにそのまま導入した。変更管理も不要でシステム管理面での負荷も低く抑えられ、システムの標準プロセスに従えばよいため、業務の標準化も容易に行えた。1つのシステムに統一したことで、社内教育も効率化でき、現場からの反発も特になかった。多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に何年もかけて取り組んでいるが、最初から『理想の状態』から始められる利点は大きかった」とその意義について語る。
こうしたシステムや業務プロセスの強みを生かし、アルカディアコールドでは、「一元的な在庫情報」と「顧客企業に近いところでの柔軟なサービス」を差別化ポイントとして急成長してきた。「われわれは創業開始からわずか2年で6つの冷凍冷蔵倉庫を同時にオープンさせた。新しい倉庫、新しい社員、新しい業務プロセスが必要になる中で円滑に立ち上げられたのは、システムが一元化されていて、トレーニングも共通化されていたからだ。今後も数年の間に25拠点程度に、倉庫を増やしていく予定だ」とラフェール氏は語る。
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