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6時間かかる計画業務が5分に、統合型基盤が変えるサプライチェーンの意思決定製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

統合型サプライチェーンプラットフォームを展開するカナダのKinaxis。その日本法人社長に新たに就任した小暮氏に、国内のSCMの現状とキナクシス・ジャパンの取り組みについて聞いた。

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6時間かかった計画業務が5分に短縮、試行錯誤の数増やす

MONOist その中でキナクシスは順調に導入を広げており、好調だと聞いています。どういうところが評価されているのでしょうか。

小暮氏 キナクシスはEnd to Endのサプライチェーン統合を実現できるプラットフォームとして「Maestro(マエストロ)」を展開している。評価されているのは、テクノロジーによるパフォーマンスの高さだ。処理速度や計画速度、構成の柔軟性などで高い性能を持ち、これらが高い評価を受けている。

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Maestroのロゴ 出所:キナクシス

 サプライチェーンには多くの企業やその中での工程がかかわっており、必要となるデータも、それを蓄積するシステムも多岐にわたる。Maestroは、これらのデータをサプライチェーンデータファブリックにより単一のソースでコンテキスト化し、その中で複合的なデータ分析などを行えるため、サプライチェーン全体で最適化された計画などを示すことができる。従来はバラバラなデータやシステムでデータを集めてきたり、最適なデータ形式に変換したりする作業が必要だったが、これらが不要になる。

 また、計算能力も高く、従来システムではMRP(資材所要量計画)の計算に6時間かかっていたところが、Maestroでは5分で終わったケースもある。そうなってくると戦略の立て方や業務のプロセスそのものが変わってくる。計算が5分で済むのであれば、試しにデータを入れて出てきた結果をベースに試行錯誤を回していくことができるようになる。多くの選択肢を試して判断できるようになり、実際に稼働させる際の失敗の確率を減らすことができるようになる。

 導入のしやすさも特徴だ。プログラミング不要な設定変更(コンフィグ)も多彩なパターンを用意し、PoC(概念実証)環境の提供を迅速に行える。さらに、クラウド環境でのバージョンアップのしやすさや頻度も強みだ。基本的には1カ月に1回バージョンアップが行われ、常に最新の機能が使用できる。

自動車産業やハイテク産業で多数の導入事例

MONOist 国内での導入事例も増えていますか。

小暮氏 着実に増えている。最近発表したものでは、臨床検査薬の富士レビオでの事例がある。富士レビオグループは、免疫分野の良質な原材料や高い試薬開発技術を活用したCDMO事業(Contract Development and Manufacturing Organization)の強化に取り組んでいるが、原材料の製造から製品の最終出荷に至る多階層にわたる複雑なプロセスで構成される全サプライチェーンプロセスを計画的に連動させたいという要望があった。そこで、Maestroを導入し、サプライチェーン全体の需給、生産、調達計画の管理を統合し、高速な計画シミュレーションを実現している。

 少し前に発表した事例では、ブラザー工業への導入がある。ブラザー工業では、グローバルなサプライチェーンの可視性と情報共有を向上させ、需要予測を改善するために、キナクシスを導入した。より正確で迅速なシナリオプランニングによりサプライチェーンのレジリエンス性を高めることを目指しているという。

 国内企業では、特にグローバル化や需要の変動の影響が大きい自動車産業やハイテク産業での反応がよく、これらの領域でさらに伸ばしていけると考えている。また、新たな領域としては、化学産業やライフサイエンス産業での領域を伸ばしていくつもりだ。

 Maestroは統合的なSCMプラットフォームだが、部分的にも導入できるため、投資対効果や必要性が見えているところから導入を進め、周辺領域に広げていくような導入の進め方をしているところも多い。すでに導入した企業でもユーザー数をさらに増やすような提案を進めていきたい。また、こうした形態であるため、大企業だけでなく中堅企業でも効果が出ている企業は多い。国内でも売上高1000億円前後の企業で大きな成果を生み出したケースなどもある。

サプライチェーン全体の最適化を描く

MONOist 今後の目標について教えてください。

小暮氏 日本の製造業は基本的なSCMシステムは整備されているケースも多いが、従来型の仕組みでは不十分だ。そういうリテラシーを引き上げる活動に力を入れたい。ユーザーなども含めて情報発信を積極的に行っていく。

 また、個人的な経験も生かし、製造業の戦略プラットフォームとして、ERP、SCM、PLM、MESという4つの主要プラットフォームをつなぐ取り組みも今後行っていきたい。さらに、企業内の情報の一元化だけでなく、企業間での情報共有プラットフォームとしての役割にも広げていく。企業の枠を超えてサプライチェーン全体が最適化できるように支援する理想像を描いている。

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