広がるSCMのネットワーク、供給元と納入先が直接つながる時代に:製造ITニュース
SCM/S&OPアプリケーション「RapidResponse」を展開するキナクシスによれば、海外では、供給元と納入先の企業の間で、より直接的なSCMの連携をとろうとする取り組みが活発化しているという。
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、部品や材料の調達から製造、販売、サービスに至るまで、サプライチェーン全体を最適化して効率を高めていく経営管理手法のことだ。製造業の根幹を成す、基礎中の基礎と言っても過言ではないだろう。
ある意味で既に成熟したかのように思えるSCMシステムだが、クラウド化やサブスクリプションモデルの導入、インメモリのデータベース技術などによって革新を提案しているのがカナダのキナクシス(Kinaxis)だ。SCM/S&OP(セールス&オペレーションプランニング)アプリケーション「RapidResponse」を展開しており、全世界で約120社に採用されている。
日本国内での事業展開は自動車分野と製薬分野が中心。2017年6月28日には、日産自動車がRapidResponseを採用したことを発表したばかり。この他、三菱自動車、コニカミノルタ、LIXIL、参天製薬など約20社の国内企業がRapidResponseを採用している。キナクシス日本法人社長の金子敏也氏は「2016年はキナクシス全体で前年比30%の成長を達成した。日本も順調に採用を広げられている」と語る。
「RapidResponse」が意思決定をするための時間を生み出す
RapidResponseの最大の特徴は、サプライチェーンにまつわるさまざまな変動要因を組み合わせてその場で高速にシミュレーションする環境を構築できることだ。このシミュレーションは、1人の担当者だけでなく複数の担当者がそれぞれ異なる条件で実行することもできる。シミュレーションの前提となるさまざまな変動要因の組み合わせを「シナリオ」と呼んでおり、複数のシナリオによるシミュレーションのKPI(重要業績評価指標)を比較検討することが可能だ。
キナクシス アジアパシフィック/日本地区セールス担当バイスプレジデントのリチャード・ロード(Richard Lord)氏は「従来のSCMシステムでは、データ収集と統合に時間がかかっている。その上、それぞれの担当者が検討したい変動要因の組み合わせやKPIを設定する柔軟さがないこともあって、帳票データをいちいちダウンロードして『Excel』で検討するという事態が頻繁に起こっているのだ。RapidResponseは、データ収集と統合やシミュレーションにかかる時間を短縮して、担当者が意思決定をするための吟味の時間を増やすことを重視している。特に、自動車メーカーのようにSCMが複雑な場合には、RapidResponseが力を発揮するだろう」と説明する。
「情報を共有することのメリットは大きい」
キナクシスの海外事例によれば、SCMで新たな動きが起き始めているという。同社プロフェッショナルサービス担当エグゼクティブバイスプレジデントのデビッド・ケリー(David Kelly)氏は「供給元と納入先の企業の間で、より直接的なSCMの連携をとろうとする取り組みが活発化している。あるドイツの化学メーカーは、ユーザー企業の在庫状況を確認しながら材料を供給している。ユーザー企業にとっても、在庫の過多や欠品が起こらないのでWin-Winというわけだ」と語る。
この傾向は、より原材料に近い製品を扱う化学業界ではグローバルレベルのトレンドになりつつある。「組み立て製造業の最終製品に近い領域で採用されているわけではないが、自動車業界などにも少しずつ影響が広がり始めている」(ケリー氏)。この他にも、特定の製品分野では、納入先と納入先の間でSCMを連携させる事例もあるという。
ただし国内市場では、異なる企業である供給元と納入先がSCMを直接つなげるといった事例はあまり聞かれない。ケリー氏は「日本では納入先となるメーカーの立場が極めて強い。また家電業界では、販売を担う量販店が主導権を握っていたりする。供給元と納入先、どちらかが強過ぎると、SCMを連携させてWin-Winの関係を築くという流れにはなりにくい。ただし、情報を共有することのメリットは大きい」と強調する。
こういった企業内にとどまらないSCMネットワークの広がりでも、意思決定をするための時間を生み出すRapidResponseの特徴を生かせるというのがケリー氏の主張だ。
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