トヨタも採用するSCMツールのキナクシス、国内2カ所にデータセンターを開設し攻勢:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
カナダのキナクシスが提供する、SCM/S&OP(セールス&オペレーションプランニング)ツール「RapidResponse」が、トヨタ自動車や日産自動車をはじめ国内企業への採用を広げている。2018年には国内2カ所にデータセンターを開設するなどしており、さらに事業展開を拡大していく構えだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて、国内企業でもデジタル技術を活用した革新であるDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっている。企業におけるDXに向けた取り組みはさまざまあるが、モノづくりを行う製造業の場合はSCM(サプライチェーンマネジメント)も重要になってくる。
このSCM分野で、国内での採用を急速に拡大しているのがカナダのキナクシス(Kinaxis)だ。クラウド化やサブスクリプションモデルの導入、インメモリのデータベース技術などを基にした先駆的なSCM/S&OP(セールス&オペレーションプランニング)ツール「RapidResponse」は、ガートナーの調査などでも高い評価を受けている。
特に自動車業界については、トヨタ自動車や日産自動車、三菱自動車、ヤマハ発動機などの大手に浸透しており、ライフサイエンス分野でも参天製薬や日本光電、富士フイルムなどに採用されている。日本法人であるキナクシス・ジャパン 社長の金子敏也氏は「自動車業界については、メガサプライヤーへの提案を強化していきたい。今後は、北米ではP&Gやユニリーバなど、国内でもアシックスの採用実績がある消費財(CPG)業界にアプローチしていきたい」と語る。
374分かかっていた受注伝票明細の処理が7分で完了
RapidResponseがSCM/S&OPツールとして高く評価されている理由の一つになっているのが、事業計画、需要予測/販売計画、在庫計画、出荷計画、生産計画、調達計画、PSI(需給調整管理)、S&OPといった計画系SCMのプロセスを1つのプラットフォームでカバーしている点だ。金子氏は「SCMの各プロセスに対応するモジュールを用意して、それらを連携させることでプラットフォームと言っている場合もあるが、当社はソースコードのレベルから1つのプラットフォームになっている点が大きく異なる。これによって、SCMの各プロセスのシームレスな連携が可能になり、その上で高速のインメモリデータベースでデータ収集に掛かる時間を短縮できるので、SCMの計画に関するシミュレーションを超高速で行える」と強調する。
実際に、あるERPベンダーのインメモリデータベースで374分かかる受注伝票明細の処理について、RapidResponseは一切のチューニングを行わずに最初の処理にかかった時間が7分、キャッシュ技術により差分のみを計算する2回目以降は数秒で終わったという。この超高速性能によって可能になるのが、日本の製造業で一般的な月次による計画を、週次に変更することだ。「月次を週次に変えるためには、日ごと時間ごとのシミュレーションが必要になるが、分単位でさまざまな計画のシナリオをシミュレーションできるRapidResponseの超高速性能があれば容易に実現できる」(金子氏)。
国内での採用事例でも、コニカミノルタがRapidResponseの導入により月次計画を週次計画に変更している。また、ある半導体メーカーは、従来10日間掛かっていた計画立案をRapidResponseの導入で3日間に短縮するなどの成果を得ている。
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