トヨタも採用するSCMツールのキナクシス、国内2カ所にデータセンターを開設し攻勢:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
カナダのキナクシスが提供する、SCM/S&OP(セールス&オペレーションプランニング)ツール「RapidResponse」が、トヨタ自動車や日産自動車をはじめ国内企業への採用を広げている。2018年には国内2カ所にデータセンターを開設するなどしており、さらに事業展開を拡大していく構えだ。
トヨタ自動車にもSaaSでサービスを提供
RapidResponseは、クラウドを用いたSaaSベースの提供形態も特徴の1つになっている。SCM関連でも多くのシステムがクラウドやSaaSによる提供に対応しているが、RapidResponseは2015年から提供形態をSaaSだけに絞り込んでいる。ベンダーに厳しい要件を課すことで知られるトヨタ自動車についても、SaaSで提供しているとのことだ。
ただし、先述した超高速性能を引き出すには、SaaSを置くデータセンターの場所も重要になる。キナクシスは、RapidResponseのデータセンターを北米と欧州に展開していたが、2018年から東京・品川と大阪の2カ所を追加した。金子氏は「これで海外にデータセンターがあることによる遅延時間の問題も解決できた。日本の製造業の場合、国内にデータセンターが求められることも多いが、そういった要求にも対応できる」と説明する。
日本のサプライチェーンにDXを起こすためには何が必要か
キナクシスは、日本国内の東西にデータセンターを開設したことにより、これまで以上に国内企業の需要に応えられるようになった。従来の国内での売上高成長率は年率20〜30%だったが、2021年はこれを大きく超える前年比倍増という高い目標を掲げている。
この高い成長目標の背景にあるのが、国内製造業におけるサプライチェーン改革に向けた意識の高まりだ。金子氏は「これまでも台風や大雨などの風水害によってサプライチェーンに問題が発生したことがあったが、これらは1週間程度で復旧できていた。しかし、あくまでBCP(事業継続計画)の課題としてERPへの投資で対応を図るのが中心だった」と語る。
しかし、COVID-19の感染拡大というパンデミックによるサプライチェーンへの影響は災害とは大きく異なるものであり、工場で生産を停止する期間が数カ月にわたるなど、災害を前提としたBCPで対応することが難しかったのが実情だ。国内の製造業は、これまでもDXを進めるためにデジタル技術の導入を検討してきたが、COVID-19の感染拡大を契機に、経営サイドがSCMを扱うシステムの革新にも注目するようになっているのだ。
何より日本国内の多くの製造業は、サプライチェーンの管理においてExcelなどの帳票ソフトを広く活用していることが多い。「現場の担当者が属人的にExcelを使ってサプライチェーン関連のデータを取り扱っている。何百万何千万とあるデータ項目を管理する現場のExcel職人によってサプライチェーンが成り立っているが、そういった熟練技術者が引退する時期も迫っている。そこで、デジタル技術によってデータの共通化を図って誰でもサプライチェーンを管理できるようにしなければ、サプライチェーンにDXは起こせない。RapidResponseであればそれが可能になる」(金子氏)という。
需要予測や工場の生産計画にも展開を拡大
RapidResponseにより計画系SCMの分野で存在感を高めているキナクシスだが、今後に向けてカバーする領域を広げるための施策も打ち出している。
まず、小売業やCPGの分野でAI(人工知能)ベースの需要予測ソリューションを展開するカナダのルビクラウド(Rubikloud)を2020年6月に買収している。そして、RapidResponseによる計画と連動する工場の生産計画を最適化するスケジューラーについては、米国のプラネットトゥギャザー(PlanetTogether)と提携し、キナクシスが同社の製品を販売していくことを決めた。
金子氏は「ルビクラウドやプラネットトゥギャザーの製品や技術は、2021年から本格的に国内顧客にも提案していく。今後も、日本の製造業のサプライチェーン改革に積極的に貢献していきたい」と述べている。
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