世界初 関西万博で大気中のCO2を回収しその場で都市ガスに変換して利用:脱炭素
地球環境産業技術研究機構、九州大学、名古屋大学は、大阪・関西万博にて大気中のCO2を直接回収する技術の実証実験に取り組む。回収したCO2は、e−メタンに合成した後、その場で都市ガスとして活用する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年4月8日、地球環境産業技術研究機構(RITE)、九州大学、名古屋大学が、大阪・関西万博にて大気中のCO2を直接回収する技術「Direct Air Capture(DAC)」の実証実験に取り組むと発表した。3事業者が参画する、NEDOの「ムーンショット型研究開発事業」の一環として実施する。
RITEは、ムーンショット型研究開発事業おいて実施中の「大気中からの高効率CO2分離回収・炭素循環技術の開発」の実証設備を、「RITE 未来の森」として万博に出展。「RITE 未来の森」も含めたCO2回収からメタネーションまでのエリアは、「カーボンリサイクルファクトリー」と呼ばれている。
カーボンリサイクルファクトリーにおいて、RITEのDAC実証機が大気中から1日あたり300〜500kgのCO2を回収する。回収されたCO2の一部は、同じ敷地で別運営のメタネーション設備に直接供給され、e−メタンに合成し、都市ガスとして会場内の迎賓館厨房などに供給、利用される。
RITEでは、以前より大気中の低濃度(400ppm:0.04%)のCO2を効率よく分離回収する技術の開発を進めてきた。今回の実証試験では、RITE のCO2固体吸収材を実機サイズの機器に使用し、評価を実施する。また、3台の実証機にて24時間連続運転することで、DACの大型化、実用化に向けたデータの収集が期待できる。
海外で実用化されている既存のDACの大半は、回収したCO2を地中に貯蔵してきた。一方、回収したCO2を燃料で再利用することも検討されてきたが、DACで回収したCO2をその場で都市ガスとして活用する事例は世界初となる。
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