ホタテの廃棄貝殻から生まれたベンチを万博で展示 建設用3Dプリンタで製造:サステナブル設計
甲子化学工業は、清水建設、TBWA/HAKUHODOと共同でホタテ貝殻を再利用して作られたサステナブルなベンチ「HOTABENCH」を開発し、「大阪・関西万博」での展示を開始した。東京と大阪の2拠点で、同ベンチの製造プロセスなどを学べるツアーも計画する。
甲子化学工業は2025年4月11日、清水建設、TBWA/HAKUHODOと共同で、ホタテ貝殻を再利用して作られたサステナブルなベンチ「HOTABENCH(ホタベンチ)」を開発し、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の「フューチャーライフビレッジ」エリアでの展示を開始したことを発表した。
HOTABENCHは、清水建設の建設用3Dプリンティング技術を活用して製造される。材料として使用される建設用3Dプリンティングに適した繊維補強モルタル「ラクツム」の一部を、水産系廃棄物となるホタテの廃棄貝殻に置き換えることで実現した。
ベンチ1つ当たり約40kgのホタテの廃棄貝殻を使用する。コンクリートを100%使用し、型枠によって作られる従来のベンチと比較して、約300kgのCO2を削減できるという。3Dプリンティングの特性を生かし、内部は中空構造になっている。
ホタテの廃棄貝殻をアップサイクルする取り組みを推進する甲子化学工業は、“万博会場で安らぎを与えるベンチ”をコンセプトに掲げ、清水建設、TBWA/HAKUHODOと共同でHOTABENCHを製作した。
意匠は、バイオミミクリー(生物模倣)のアプローチに基づき、ホタテ貝を模倣した特殊なリブ構造を取り入れている。3Dプリンティング特有の積層痕を表面にあえて残すことで、自然が生み出したような仕上がりを演出する。
HOTABENCHの製作では、北海道猿払村のオホーツク海沿岸で採れたホタテの貝殻に加え、内浦湾(北海道)および陸奥湾(青森県)で育ったホタテの貝殻も使用している。原料として使用するホタテの種類や育成方法によって素材の特性が微妙に異なるため、理想的な配合比率を見つけるまでに多くの試行錯誤を要したという。
今回の発表に併せ、HOTABENCHの製造プロセスを学び、その一部を体験できる教育ツアーを、東京と大阪の2拠点で実施する。東京では清水建設のイノベーション施設「温故創新の森 NOVARE」でHOTABENCHの製作工程や大型3Dプリンタについて学べ、大阪ではホタテの貝殻を活用したモノづくり体験が楽しめる。ツアーの詳細に関しては、今後特設Webサイト内で発信するとしている。
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