カキ養殖の救世主!? ホタテの貝殻にレーザーで穴を開けるロボットシステム:2019国際ロボット展
ロボットシステムインテグレーターの高丸工業は「2019国際ロボット展(iREX2019)」に出展し、開発・納入事例として「カキ養殖用ホタテ貝殻レーザー穴開けロボット」の展示デモを披露した。
ロボットシステムインテグレーターの高丸工業は「2019国際ロボット展(iREX2019)」(2019年12月18〜21日、東京ビッグサイト)に出展し、納入事例として「カキ養殖用ホタテ貝殻レーザー穴開けロボット」の展示デモを披露した。
カキの養殖は、大きく「採苗」「抑制」「筏養殖」という工程を経て、収穫となる。通常、カキの幼生はふ化後、約2週間、海中をしばらく漂った後に、岩などに付着して成長していく。カキの養殖ではこの性質を利用し、ホタテ貝の貝殻を海中に入れて、カキの幼生を付着させる。これを採苗と呼び、養殖業者はカキの放卵期に併せて、ホタテ貝の貝殻の中央に穴を開けて針金を通し、何枚も束ねた採苗連をいくつも用意しなければならないのだが、これが実はかなり大変な作業なのだという。
今回、高丸工業が展示したカキ養殖用ホタテ貝殻レーザー穴開けロボットは、従来手作業で行われていたホタテ貝の貝殻の中央に穴を開ける作業を自動化するもの。実際に、広島県のカキの養殖業者から依頼を受けて、開発、納入したものを展示会向けにサイズダウンして持ち込んだ。
カキ養殖用ホタテ貝殻レーザー穴開けロボットによる作業の流れは次の通りだ。まず、ホッパーに投入されたホタテ貝の貝殻は振るいにかけられ、中央のコンベヤーに流されていく。その際、カメラによる画像認識が行われ、その情報はライン上のロボットに送られる。ロボットは先端の吸着ハンドでコンベヤーを流れるホタテ貝の貝殻をつかみ、ガルバノ方式のレーザー加工機の待つ加工用ラインへきれいに配置していく。ちなみに、ロボットは上流側と下流側に分けられており、下流側は上流側が取りこぼした際の補助として機能する。レーザー加工機の手前では、ホタテ貝の貝殻がどちらの面を向いているのか(表か裏か)を距離センサーで捉え、その高さ情報をレーザー加工機に送り、的確に穴開けを行う。最後に画像判定による検品が行われ、良品が袋詰めされる。今回、展示会向けにその一部を切り出してデモンストレーションを行っていた。
「普段は工場の生産現場などで使われる一品一様の装置をインテグレーションすることが多い。『カキの養殖のため』というのは珍しいケースだ。実際、カキ養殖用ホタテ貝殻レーザー穴開けロボットを導入したことで、『穴開けの失敗やミスが大幅に削減でき、カキ養殖用ホタテ貝殻の生産量が向上した』と高い評価をいただいている」と同社説明員は述べる。
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