3Dプリンタを活用し、廃プラから「大阪・関西万博」の演台/司会者台を製造:サステナブル設計
鴻池組とスワニーは「大阪・関西万博」の施設整備事業小催事場建設工事において、3Dプリンタで製作した演台/司会者台を納品した。建設現場から回収したPPバンドを再資源化し、ペレット押出式大型3Dプリンタで造形を行った。
鴻池組とスワニーは2025年4月14日、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の施設整備事業小催事場建設工事(施設正式名称:EXPOナショナルデーホール)において、演台および司会者台を3Dプリンタで製作し、納品したことを発表した。建設現場から回収したPP(ポリプロピレン)バンドを再資源化し、演台/司会者台の製造に活用した点が大きな特徴となる。
大阪・関西万博が掲げる「建設の過程で発生した廃プラスチックを原料に実用的なものを製作し、撤去工事の際はマテリアルリサイクルの資源循環に戻す」という理念に基づく取り組みとして、博覧会協会に提案し、承認を得て製作した。
廃プラスチックのマテリアルリサイクルに挑戦
建設現場では工期中にさまざまな産業廃棄物が発生する。中でも、資材の梱包(こんぽう)材や養生材などから大量に出る廃プラスチックは、その性質が多岐にわたるため、サーマルリサイクルに頼ることが多く、マテリアルリサイクルには向かないとされていた。
こうした課題に対し、鴻池組は以前からマテリアルリサイクルに取り組んでおり、その経験を基に3Dプリンタによるプランター製作を実現。今回、そのノウハウをさらに発展させて、大阪・関西万博で使用する演台/司会者台の製作に取り組んだ。
演台/司会者台の材料として、荷物の梱包や固定、運搬などに使用されるPPバンドを再資源化したリサイクルPPペレットを50%以上使用している。残りの約50%は強度を高めると同時に形状を安定させる特性を有するフィラー材を含むコンポジット材料を用いた。
回収されたPPバンドをリペレット化する工程は、環境配慮型素材や資源循環プラットフォームの展開などを行うTBMが担当した。そのペレットを使い、スワニーが3Dプリンタによる製作を担った。演台/司会者台のベース部の製造には、スワニーが保有する3D Systems製ペレット押出式大型3Dプリンタ「EXT Titan Pellet」を用いた。
さらに、大阪・関西万博の公式ロゴマークとデザインエレメントを取り入れた演台/司会者台の意匠部も3Dプリンタ(EXT Titan Pelletとは別の装置)で製造した。材料には、旭化成の環境配慮型材料であるセルロースナノファイバー(CNF)フィラメント材が用いられている。
※訂正:リリース発信元からの要請により、一部表現について見直しを行いました[更新:2025年4月16日]。
今回製作した演台/司会者台は、2025年3月23日の大阪ヘルスケアパビリオン開館式および同年3月27日の警察/消防の専門部隊発足式で実際に使用された。万博開催期間中もさまざまな式典やイベントで利用される予定だ。
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